第3話

詩帆がちょうどご飯を食べ終わった頃、スマートフォンからメッセージの通知音がなった。

雫だ。

『詩帆ちゃん!今東京に着いたよ!』

『無事に東京に着いてよかった。家までも気をつけてね。』

待ち構えていたかのようにすぐに既読がついて返信が来たことに雫は嬉しくなって微笑んだ。

『ありがとう!お家に着いたらまた連絡するね。』

そのメッセージを見て、詩帆は家までどこくらいなんだろうと思った。

雫からメッセージが来るまでソワソワと待ってしまう。

テレビを眺めてはいるものの、内容が頭に入ってこない。

「詩帆~?お風呂先入る~?」

上の空でテレビを眺めていると、お母さんから声がかかった。

このままソワソワと待っていても仕方ないと思い、気分を切り替えるためにもお風呂に入ることにした。

「うん、入る~。」

お母さんに返事をして、お風呂へと向かった。

お風呂から上がって部屋に戻ると、ちょうど雫からメッセージが来たところだった。

今届いたところなのを見てほっと一安心する。

結局お風呂に入っている間もメッセージが届くんじゃないかとソワソワしてしまい、いつもより早く上がったのだ。

『ただいま!無事家まで帰ってきたよ。』

『おかえりなさい。無事帰りついて良かった!お疲れ様~。』

『ありがとう!さっき別れたばっかりやけど、もう詩帆ちゃんに会いたいわ。』

雫からのメッセージに詩帆の心はドキドキして温かい気持ちになった。

『私も雫ちゃんにまた早く会いたいなぁ。就職して一緒に暮らせるようになるまでは時々しか会われへんの、寂しいな。』

『詩帆ちゃんに会いたいからいっぱい会いに行けるようにバイト頑張るな!毎日メッセージもするし、電話もしよ!寂しい思いなんてさせへんよ。』

『ありがとう。私も雫ちゃんに会いに行けるようにバイト頑張る!』

『二人で頑張ったら会う機会もきっといっぱい作れるよ!一緒に暮らせるようになったらずっと一緒におれるんやから、それまでの辛抱や。』

『そうやね。今私たちが大学2年生やから1年半くらいか…。頑張ろうな。』

『うん!1年半なんて、楽しいこといっぱいしてたらきっとあっという間やと思うよ。』

『そうやね。でも東京なんて修学旅行でしか行ったことないから、住むなんてまだ想像できへんなぁ…。』

『東京言うても住んでみたらそない変わらんよ。東京やったらパートナーシップ制度が導入されてるところも多いし、住むとこも選びやすいと思う。』

『パートナーシップ制度ってなに?』

詩帆はパートナーシップ制度をどこかで聞いたことはあったが、それがなんなのか詳しくは知らなかった。

『日本やと同性同士で結婚できひんやろ?パートナーシップ制度っていうのはな、同性同士でも結婚してるのと同じような関係ですよっていう証明書を出してくれる制度なんよ。』

『つまり、結婚みたいなもんなん?』

『わかりやすく言うとそうやな!うちはな、いつか詩帆ちゃんとその証明書を貰いたいんよ。』

詩帆はドキリとした。

それは、実質プロポーズだと思ったからだった。

そんなにも雫が好きでいてくれて、ずっと一緒にいたいと思ってくれていることが嬉しかった。

『まるでプロポーズみたいやわ…。私も、ずっと雫ちゃんと一緒にいたいわ。』

『うん、ずっと一緒にいよな。』

ふと時計を見ると、22時だった。

雫は帰ってきてすぐ詩帆と連絡をずっととっていたからまだお風呂にも入っていないはずだ。

そう思い、詩帆はメッセージを送った。

『雫ちゃん時間大丈夫?まだお風呂にも入ってないんやない?』

『あ、もうこんな時間なんやね。そろそろお風呂入らんと…まだ詩帆ちゃんと話してたいなぁ。』

『また明日話そ!私も明日の楽しみにとっとく!』

『そうやね。じゃあ、また明日な。おやすみ。』

『おやすみ。』

そうして夜が更けていった。

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