第9話

 ビルカが去って、テールとライは2人きりになる。そして魔神の肉を満足するまで食べたライが、

 

「ああ……そうそうテル。言っておくことがあるんだ」

「なんだ?」


 名前の訂正は諦めたようだ。


「テルについていったら、強いやつに出会えるかな?」

「……経験上、変なやつがよってくることは多いな」

「変なやつって……テルには言われたくないけどね」まったくその通りだった。「よし決めた。私はテルと一緒に旅に出る」

「……断ったら?」

「尾行していく。その刀を持ったまま、私から逃げることは不可能でしょ?」


 テールは魔神と戦ったときのライの速度を思い出す。たしかに逃げ切ることは不可能だと認識して、


「……ケンカはしなくていいのか?」

「勝っちゃったら、テルが旅を辞めちゃうかもしれないからね。だから、テルは最後にする」

「最後?」

「うん。私が旅に出てもっと強くなって……それでも強い人と戦いたいという願望が消えなかったら、テルと戦う」


 ガッカリさせないでよ?とライは笑う。テールですら心拍数が上がるほどの威圧感を持った笑みだった。


「……好きにしろ」

「わーい」


 ピョンピョンと飛び跳ねて、ライは喜びを表現する。そこに先程までの威圧感は皆無だった。


「一応言っておくが、自分の身は自分で守れ。俺は助けたりしないからな」

「うん。私もテルのことは助けないから、そのつもりでね」

「……分かっている……」


 もともとテールは一人旅をしていたので、誰かに助けられるとは思っていなかった。


 そんなこんなで、テールとライの二人旅が始まったのだった。


 ちなみに翌日はライが腹痛を起こしたので、旅が始まったのは、その翌日だった。

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伝説の妖刀に選ばれなかったので刀は抜けなかったが、鈍器として大活躍しました。 嬉野K @orange-peel

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