先生に「体力テストするから」と言われたから来ただけの体育館だったんだけど、なかなか面白い話をしてる人たちがいた。

 その声がする部屋の前で立ち止まってみる。


「……特撮研究会……」


 その部屋のドアにはそう書かれた画用紙が貼ってあった。



「でもせっかくベルトとか作ってるんだから変身したいじゃん!」

「だからそれは無理だと言ってるんです! そもそも、もし作るとしたらいったい誰が作るんですか!」

「そりゃもちろんリョウに決まってるじゃん」

「僕はお断りですよ。そんな無駄なことに付き合ってる暇、ないので」

「じゃああたしが作るし」

「どうぞ勝手にしてください!」



 中からは男子生徒と女子生徒が何か言い争っている声が漏れてきている。

 男子の方はたぶんクラスメイトの豊田くんだ。

 あの子、クラスではなんかすかした態度してるのに、こんなに熱くなれる子なんだな。

 でもあんな冷静そうな彼にここまで大きな声を出させる女子の方も気になる。


「ふふっ……」


 思わず、笑みがこぼれていた。

 なんか楽しそうかも。

 明日にでも行ってみようかな、特研。

 そうしたら私も、きっと――


「さて、そうと決まれば今日中に済ませちゃいますかっ」


 大きく伸びをしながらそう言って、私はその場を立ち去った。

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