8-9 遺志

「リウ様。ラカの元へお戻りください」

 男の声が響いた。

 割れた窓のそばに、黒装束の坊主が立っていた。

「そこにいるのは人ならざる者。忌まわしきゲツの遺志がついえた今、ここに残る意味はありません」

 坊主はリウに向かって目を伏せている。

「…………」

 リウは仮面の奥からダリアを見据えている。

 気づけば、坊主はもう消えていた。

「ハヌマン、追いなさい」

 不意にダリアが口を開く。

 その声を聞いて、ハヌマンはようやく我に返った。

 ずっと呆けていたのだ。

 もはやリウの姿も無い。

「愚図が」

 ダリアの罵声が響いた。


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