第8話
8-1 蹂躙
夜、とある廃工場。
ドラム缶に焚べられた廃材が、対立する二つの集団を赤く照らしている。
「払えないとはどういうことです」
「そちらの返金が先だと言っている」
それぞれの代表と思われる二人が、火を挟んで睨み合っている。
「常識を弁えていないようですね」
「それはこっちのセリフだ。どうしようもないゴミを売りつけやがって」
「まずはそちらの主張が言いがかりではないことを証明して頂きたい」
「とぼけるな、ペテン師どもが!」
男は足元のアタッシュケースを持ち上げ、その中に入っている無数の袋をドラム缶の中に勢いよく放り込んだ。
大きく揺らぐ炎を中心に、冷たい緊張感がにわかに広がる。
今や、そこにいる誰もが臨戦態勢を取っていた。
一時の沈黙を打ち破ったのは、けたたましい轟音だった。
天井が崩れ、何か巨大なものが落ちてきた。
数人が押しつぶされて死んだ。
誰かがそれにライトを向けた。
白い大きな顔が浮かび上がった。
石の怪物だった。
怪物はドラム缶に顔を突っ込み、中身を貪っているようだった。
やがて食事を終えた怪物は、銃声を鳴らす人々を紙くずのように叩き潰した。
皆、殺された。
蹂躙だった。
そこに、現れた者がいた。
それは、少年のようだった。
惨劇から生き延びた僅かな生存者による報告である。
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