6-6 寺院
あれから一夜が明けた。
ハヌマンは今、木々に囲まれた坂道を登っている。
旧観光地であるこの山は、道がしっかり舗装されているため準備なしでも気軽に訪れることができる。
観光客こそほとんどいないが、釣りや野鳥観察を趣味としている人にとってはそれなりに有名らしい。
歩きながら、ハヌマンは情報を整理する。
エプロン男の供述通り、今回の一件で多くの組織は薬物の不良品を掴まされていることが判明した。
加えて、それらを回収する何者かの存在。
これもほぼ間違いない。
問題はその意図だ。
失態の尻拭いをしたいのなら、人を動かすより示談金でも支払ったほうがよほど簡単だ。
わざわざゴミを回収する必要など無い。
例えば、薬物を隠れ蓑に何か特別なモノを日本に持ち込もうとした。
いや、密輸を隠蔽するための密輸など意味不明だ。
発覚のリスクが大きすぎる。
これほど大掛かりで手の込んだことをするからには、それなりの目的があるはずだ。
それが全く見えてこない。
ダリアは既に何かを掴んでいるのだろうか。
まあいい。
聞けばわかることだ。
昨夜の調査により、回収者の裏に一つの組織があることが浮かび上がってきた。
邪教会。
日本で最も大きな影響力を持つ暴力組織の一つである。
ハヌマンは足を止め、目の前の山門を見上げる。
マフィアの本拠地とは思えないほど立派な寺院が、門の奥に広がっていた。
古い総本山を占拠したのか、あるいはそうした寺を模して新たに建てたのか、ハヌマンは知らない。
関係のないことだ。
訪問して話を聞く。
邪魔する者があれば排除する。
それだけである。
ちょうど、ハヌマンが境内に足を踏み入れようとした時であった。
「だめですよ」
門の陰から声が聞こえた。
「誰だ」
「あたし? ヒズミです」
茂みから、一人の少女が顔を出した。
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