4-3 無差別

 絶えることのない銃声が鼓膜を揺らす。

 教会の扉は、銃撃によって完全に破壊されている。

 セツナは、ベンチの陰に伏せていた。

 弾切れを待っているのだ。

 だが、どれだけ耐えても嵐が止む気配は無い。

「なんですか、急に!」

 通路を挟んだ向かい側で、ヒズミが同じように伏せている。

「いいからじっとしてて」

 銃声にかき消されないよう、セツナも声を上げる。

 ここに少女を運び込んだ本人だろうか。

 嗅ぎ回られることを恐れて始末しにきたか。

 だが、この銃撃は明らかに無差別だ。

 ヒズミもろとも侵入者を殺すつもりがあるのなら、なぜ彼女を生かしておいたのか。

 銃声が止んだ束の間、セツナは通路から僅かに顔を出すようにして、教会の正面に立つ襲撃者を覗き込んだ。

 

 そこにいたのは、一人の少年。

 紺色のローブのようなもので全身を包んだその少年の顔はフードで覆われていて、はっきりと確認することができない。

 抱えているのは機関銃か。

 比較的小型であるとはいえ、子供が持ち運びできる大きさではない。

 やがて、銃にマガジンを取り付け終えた少年は、また教会に向けて掃射を始めた。


 このままでは、いずれ二人とも命を落とすだろう。

 セツナは、自分が陽動を行う意思を伝えようとして、ヒズミの方を向いた。

 血。

 血溜まり。

 血溜まりがある。

 赤い海の中心で、ヒズミは、動かなくなっていた。

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