2-4 悪趣味
壁には髑髏が並んでいた。
室内に足を踏み入れるまでもなく、はっきりと見えるほどそれは白かった。
自然に白骨化したものではない。
飾るために漂白したのだろう。
であれば、同じように壁に掛けられた革製のジャケットのようなものは、人皮か。
なぜ病室にこんなものが。
いや、ここはもはや病室ではない。
狩人の住処だ。
「悪趣味だな」
リンは言い終えると同時に、背後に向かって拳銃を突きつけた。
銃口の先には少女が立っていた。
「あ……ご、ごめんなさい」
少女は小さな声を震わせている。
歳は十にも満たないくらいか。
ウェーブのかかった茶髪が、腰まで伸びている。
「ここは入っちゃいけないって……言われてるから」
「誰に」
「おじさんに……」
少女は怯えている様子だった。
「お前、名前は?」
「…………」
少女は何も答えず、ただ首を振った。
「答えろ。狩人とは何だ」
「もうよせ」
リンの問いを遮ったのは、先程階段に立っていたあの男だった。
「政府には俺の仕業だと言えばいい。俺一人を突き出せば……それで済む」
廊下に立つその男は青ざめた顔をして、リンに拳銃を向けている。
「語るに落ちたな。お前が真打ちじゃなければ、やっぱりこのガキか」
リンもまた男に銃口を向ける。
少女は二人の間で震えている。
「頼む」
男が言った。
「断る」
リンが言った。
「だったら――」
そして一つの銃声が響いた。
「うぐぅ」
男は血まみれの右手を左手で押さえている。
だが、リンの状態はもっと深刻だった。
胸から、何かが突き出ているのだ。
赤くて、湾曲した何かが。
それは、大きな刃物だった。
背後から心臓を貫かれたリンは、膝から崩れ落ちるように倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます