エピソードS③

「普通ならちゃんと平たい道路でせめて行うもんだろ…」


うちの学校のマラソン大会は少しおかしい


途中までは国道を走るのだが途中から山の中にある空港沿いの砂利道を通りアップダウンの激しい山道を通って学校に戻ってくるルートである。


途中の休憩所はかなりの数用意してあるのだが苛酷なのは変わりはない。


「正直歩いてでもキツいんだよな」


ウエストポーチから飴を取り出し舐めながら俺はぼちぼち歩いていた


途中中等部の男子や女子に抜かれながらも気にせずゆっくりとでも足は止めず歩いていた。


「先輩!今年もですか?先に行きますね」


部活の後輩(もちろん中等部)から声を掛けられたが涼しい顔をしながら手を振って見送る事にした。


「やっと着た!!しーちゃん!こっちよ」


聞き覚えがある声でなるべく大きな声でよばれたくない名前が呼ばれるのに俺は気づいた。


そこには、休憩所に裕貴の伯母さんが、笑顔でこちらに向かって手を振っていた。


「伯母さん、高校生なんだからしーちゃんは辞めよ?恥ずかしいわ」


休憩所にたどり着いた俺は手作りのおにぎりを受け取り食べながら伯母さんにいった。


マラソン大会では有志で生徒の親が安全確保と休憩所での生徒のケアを行っていた。


「いいじゃない、しーちゃんも私の息子みたいなもんだし、裕ちゃんは先にいったわよ?」


とこちらの訴えを無視しながらそう告げた


「知ってますよ、今年もトップ10目指すとかいってましたし、あ!GWにまた遊びにいきますんでよろしくです。」


おにぎりを食べおわり、水筒にはいっていたキンキンに冷えた栄養ドリンクを飲み干して俺は続きを歩く事にした。


休憩所にいた体育教師の『氷街走れ!』と言う言葉を無視して


走行?距離も体感半分を過ぎ


車の通りがほとんどない峠道を歩いていた頃


道の傍らにうずくまってる何かを見つけた


近づくとうちの女子生徒…運動服から察するに中等部のようだった。


「どうした?」


俺は足を止めて話しかけた。


「足が痛くて誰か通らないかっておもってました。」


とだけ答えた女子の目には涙が滲んでいた。


「ここは親たち配置されてないし先生達もしばらくは通らないぞ、あと少し行ったら休憩所だからそこまで手を貸すから歩こう。」


携帯が流通し始めた頃、うちの学校でも持っている人間は少なかった。


「俺は運動部じゃないから体力がないからおぶっていく事はできないからな」


俺は手を差し出した。


その娘はゆっくりと、足をかばいながら


「はい、なんとかがんばります。」


立ち上がり手を握り返した。


俺はその娘の手をとり歩き出した。


その手は小さくまだまだ幼い…小動物のような印象を与えた。


しばらく川沿いの歩道をあるいた頃、休憩所にたどり着いた。


そこには見知った教師がいたので事情を軽く話して俺は先を行く事にした。



「んで?その後は?名前は聞いたのか?」


マラソン大会が終わった夜、裕貴と電話して先程起きた事を話したら食い付いてきた。


「その後?さぁ?リタイアしたんじゃないか?名前なんか聞いてないよ、俺はすぐに出発したし


と俺は答えた。


アレから面倒事を起こしはしても巻き込まれるのは勘弁願いたかったからだ


「つまらないな、せめて名前だけでも教えておけば何か起きたかもしれないだろ?」


と本当につまらない様子で裕貴がぼやいた


「とき○モじゃあるまいしむしろ野生のポケ○ンに遭遇した気分だわ」


「モンスターって(笑)ボール投げろボール(笑)」


と当時のゲームを使ったボケやツッコミで返しあう


裕貴は運動部、俺は文科系接点のなさそうだがゲームや漫画などの趣味が合い中等部からの付き合いなのである。


「投げねぇよ、とりあえず明後日そっち行くから、とりあえず明後日な」


そう言って話題を打ち切り電話を切ることにした。



本当にあの小動物感はモ○ナかポ○モンだな…


と思い返しながら俺は疲れた身体を癒すために寝ることにした。

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