エピソードM⑯

『今、何してる?』


だけメールした


返事を急ぐつもりもなく、来るまで待つつもりだった。


『今日はバイトが休みなのでブラブラしてました。』


5分ほどで返事がきた。


『話がある、あそこに来てほしい無理にはとは言わない』


とだけ送りながら歩みを進めていた。


返事はなかった


夜風が冷たく頬を刺す風が馬鹿な自分を叱責しているように感じた。


俺は熱くなった頭を冷やす様に考えをまとめていた


最初は憐にはめられたと思っていた


『でも、なんだかんだ楽しかった』


人を好きになりたくなかった、 一人きりの方が気楽だった


『あの時の手の感触、花火を見ていた横顔がまだ脳にしっかり残っている』


好きになっても傷つけるだけだと思っていたから


『一緒に過ごしたり、電話している時、そんなこと一切考えてなかった、舞の傷つく姿をみたくない』


『いや、そもそも俺なんか好きになってもらう資格あるのか?』


舞の笑顔を近くで見ていたい



ポジティブとネガティブが入り交じっていた思考が次第に一色に変わり


そして俺は


あの時の神社についた



なんと、舞はすでに階段の所に膝を抱えて座っていた


「舞ちゃん!!」


俺驚いて舞に話しかけた


「氷街さん... どうしたんですか? こんなところに呼び出し て」


と覇気のない声で首だけをこちらに向けて舞は答えた


「...... 少し話そう最近メールとかもしてなかったし」


答えを聞かずおれは舞の隣に座った


「憐ってさ...」


憐の名前に舞はピクッと反応した


おれは構わずに


「憐って無茶苦茶だよな、 俺が最初に会ったときも『どっちが先に彼氏、彼女ができるか』って賭けを持ち出すし、そしたら幸せのお裾分けとかいいながらも色々巻き込んでいくし」


舞は何も言わなかった


「まぁて友達想いだし真っ直ぐだよな」


「俺は憐の事好きだ」


舞の肩が震えているのがわかったが俺は続けた


「女ってより、 同性の友達みたいな感じだけどな」


「俺は恋愛するのが苦手だ」


「俺は行動が気ままだし口も荒い」


「だから一人きりが楽だし傷つけるのも傷つくのも嫌だ」


「……そう、 思っていた方が楽だったんだけどね」


話をしながら脈絡が無くなっていて、しどろもどろしてい た


ひとつ深呼吸して


「ねぇ、 舞ちゃん」


俺は舞が反応するまでまっていた。


涙で腫れた目で舞がこちらを向くと


「俺は格好よくもないしさっき言ったみたいな奴だ」


「もしかしたら傷つける事もあるかも…いや、し傷つけることも喧嘩も多いと思う。」


「でも、 そんな俺でもいいんなら、君のそばで守らせて欲しい、嫌、違うな…俺と付き合って欲しい」


暫くの沈黙の後


「氷街さん... 嘘じゃないですよね?」


「嘘じゃないよ、こんな俺でもいいならだけどね」


「答えは…決まってます」


と、いいながら舞は俺に抱きついてきた


「二回目だね、 舞ちゃんに抱きつかれるの」


と照れた様子で俺は言った


「ですね、 でも今回のは遠慮なく抱きしめれるから嬉しいです」


と、涙まじりの笑顔を俺に向けた


「だね」


と、照れ顔の俺と半泣きの笑顔の舞とで向き合って笑いあっていた


突然、舞が


「氷街さん、お願いあるんですけど...」


と、恥ずかしながらこちらを見直した


「なんでもどうぞ姫」


とふざけながら言った


すると、 少し頬を膨らませて


「姫はやめて下さいよ、あの... 舞って呼んでもらって良いですか?憐ちゃんだけ呼び捨てはズルいです」


俺は笑いながら


「あはは、 そんなことか...いいよ、 舞これからもよろしく」


そういうと舞の顔が赤らみ


「はい、こちらこそ氷街さん、よろしくお願いいたします」


と呟いた


「うん…舞好きだよ」


「私も、 氷街さんの事す...」


舞の言葉を聞ききらないうちに、 俺達は初めてデートした神社で、恋人になって初めてのキスをした

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