エピソードM⑮

舞は俺のことが好きで、 俺は憐が好き?


そんな事、一言も言ってないし思ってもいなかった


確かに憐は友達想いのいい奴だが恋愛の対象には見てもいなかった


それよりも舞が俺のことを思っているのに驚いた


正直、俺はわざと話がしやすい憐の友人を演じてきたつもりだっ たからだ


そのほうが余計なことを考えなくてすむ


傷をつけなくてすむ


傷つかなくてすむ


俺は独りでいい


傷に臆病な俺のあの頃からの処世術だった


ふと考えると


舞と話しているとそんなこと考えていなかった気がする


≪守りたい≫


≪もっと笑顔をみたい≫


そう思っていたのかもしれない


いろんな考えが頭の中を廻っているうちに流しっぱなしだったテレビから番組の企画で生まれた化学反応という名前の男性デュオの名曲が流れていた


「もう、あんな思いはしたくないんだ」


「俺の為にも舞のためにも」


聞こえるはずのない、二人の鳴き声が脳内を駆け巡る


心にズキズキとした痛みを残したままいつしか寝てしまっていた。


答えを出せないまま一週間がたち


俺は憐を喫茶店に呼び出した


「いきなり呼び出すなんて、 何事?」


「ん? ああ…ちょっと相談かな」


「珍しい!! あんたが相談?明日は台風かしら」


と普段の調子の憐がいた


「なぁ?俺ってどんな奴?」


「はぁ?いきなり何なの? …んっと格好よくも可愛くもないし、口が悪くて面倒見がよくてクールぶってて実は熱血なとこもあるさみしがり屋…かな?」


「絶対ほめてないなそれ」


聞いておきながら俺は怪訝そうな顔になっていた


「だってそうじゃない? 普段は人のことなんか関係ないってしときながらなんだかんだで知り合いの事となるとすぐに飛び出す、 さみしがり屋ってのは直感かな」


「なるほど…ね」


容赦なく痛い所をついてくる。


しばらく間をおいて舞が淡々とさも全てを知っているかの様に


「何があったか知らないけどさ…答えを出すのはあんたなんだし、その結果に私が何か言うつもりもない、後悔がない選択なんてないけどさ、 ただ自分も心と向き合って自分がいいって思える選択しないといけないよ?」


と語りだした


「あんたは傷つけたくないって優しさで考えてるかもしれないけど…ただ単にあんたが傷つきたくないって、一人になりたくないって思って、勝手に『これでいいんだ』って悲劇のヒロインぶってるだけじゃない?」


きつい言葉を優しい口調で淡々と憐は語る


「どんな答えを出したとしてもあんたの世界はあんたを中心に回ってるの。あんたの出した答えが世界の選択なんだよ」


何処かで聞いたような言葉を憐は俺に突きつける


「そうだな…」


俺はスッキリとした顔で憐を見た


憐はいつもの笑顔で


「いってらっしゃい」


とだけ告げた


「おう、ちょっくら選択してくる。」


それだけ告げコーヒー代をテーブルに置き


俺は彼処に向かった

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