エピソードM⑤

とりあえず祭りが始まるまで、近くの喫茶店に行くことにした。


二三日前に初めて会ったお互いに話すことが見つかる訳もなく話は自然に隣の話になっていた。


「憐って他人の心配ばっかりしてる気がするな」


「学校とかでもそうですよ♪私おっちょこちょいだからい つも迷惑かけてばかりで」


「なるほどね、 悪い奴じゃないのは確かだな」


「ですね!わざわざメールで 『ちゃんと行きたい所とかしたいことは言わなきゃだめだよ』って言ってくれたんです!」


と、次第に待ち合わせの時よりも笑顔が増えて会話も増えてきた。


お互いの趣味、 学校のことなど

学部が違うとはいえ、同じ構内なので話が合う事も少なくなかった。


どうやら女子高出身で引っ込み思案の性格のせいか彼氏は元より異性の友人もいないらしい


喫茶店を出てから舞の買い物に付き合ったりゲーセンに行ったりと祭りまでの時間潰しにしては充実していた


時計の針が18時を指す頃


二人は祭りの会場の神社へ向かった


そこは何処にでもあるような、こじんまりとした神社だった


境内に向かう道は思ったより人が多く

舞がはぐれそうになったから俺は


「ほらっ迷子になるなよ」


と、ぶっきらぼうに舞の手を掴む


「は、はい」


と俯きながら俺の手を握り返してきた


屋台を色々見てまわっていたが人に酔ったのか舞がずっと俯いていた。


暫くして人混みも少なくなってきた頃

俺はまだ手を繋ぎっぱなしまったことに気付き焦って


「すまない、 はぐれなさそうだから手を離そう」


と、聞くと舞は


「いえ...嫌じゃないんでもう少し繋いでいたい...です」


と、祭りの音に消えそうな声で舞が言った。


俺も少し気恥ずかしくなって


「う、うん、わかったそろそろ花火始まるから行こうか」


と、お互いに手を繋ぎ歩いた。


境内につく頃、 花火が始まった。


こじんまりとした神社でみるとは言え、近くの城の敷地を利用して打ち上げをしている為か内容は地域最大らしく、何万発もの打ち上げ花火が上がっていた。


祭りは基本的に人が多く苦手で花火を見るのは久しぶりだった。

しかも女子と二人きりというのは初めてで、 でも嫌な気はしなかった


むしろ花火を見る舞の横顔を思わずドキリと思っていた自分に少し驚いていた。


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