第12話 キューピッドはいるの?

届かないと、叶わないと知れば知るほどどんどんあなたに惹かれて行く。


怖いぐらい真っ直ぐに。あたしはあなたに恋をする。



結べなくても。


終われなくても。



☆★☆★


「じゃーん!!」


ただいまも言わずにリビングに飛び込んできた幸は、エプロン姿の桜を捕まえると紙袋から本日の戦利品を取り出して言った。


「これ・・・浴衣?」


お玉片手に途方に暮れた桜はまじまじと差し出された浴衣を見た。


白地とグレーの格子模様の布地に、鮮やかな梅と桜が濃淡の紅色とピンクで描かれた華やかな浴衣に、黒の帯、そして、シフォン素材の飾り帯、帯どめのアクセサリーまで綺麗にセットになっている。


「かわいいー・・・」


ぽつりとつぶやく桜を満面の笑みで見返して幸はそれを桜の体に当てる。


「気に入った?これはさぁちゃんのよ」


「え・・・?」


「こないだ、一緒にお風呂行ったとき何年も浴衣着てないって言ったでしょ?」


毎年夏祭りはどうしてるの?


何気ない幸の問いかけに、毎年仲の良いクラスメイトや、他校の男の子のグループに誘われて行く事はあるけれど、浴衣は随分着ていないと答えたのだ。


歩き回るし、着崩れしたら困る。


憧れはあったけれど、最後に着たのは多分中学1年生の夏祭りが最後だったと思う。


嬉しいけれど、こんなセットで貰って良いものかと思ってしまう。


「で、でも・・・」


遠慮しそうな桜の言葉を遮るように幸が続けた。


「ちゃーんと巾着と下駄までセットで買って来たんだから」


「え!そこまで!?」


「だってどうせなら一気に準備した方が良いでしょう?夏祭りも花火大会もすぐなんだから」


何事も先取り命な職業柄、こういうファッション関係の事において、幸はいつもの3倍の素早さで行動する。


「遠慮なく着て頂戴」


そう言って別の紙袋から宣言通り、下駄と藤のカゴにちりめんの布で作られた巾着が付いたカゴバックが取り出された。


今からでも、お出かけで来そうなフル装備だ。


幸が桜を喜ばせる事を至上の命題としている事は、嫌と言うほど知っている。


そして、ここは素直に喜んで良いところだ。


「嬉しい!ありがとう!」


「うちに出入りしてるメーカーさんにカタログ見せて貰って、取り置きをお願いしてたのよ。ボーナス入ったし、ご褒美ご褒美」


「こないだ豪華ディナー食べさせてもらったばっかりなのにー・・」


浴衣がいくら位するのか分からないけれど、幸が選ぶものである以上、中途半端はあり得ない。


使うと決めた時には潔い程財布の紐が緩くなる性格なのだ。


こんなにお金使って大丈夫だろうか?


そして、自分でゆうのもなんだけど・・甘やかされすぎてるー・・・


浴衣と幸の顔を交互に見てしきりに心配そうな表情になる桜に、幸が快活に笑った。


「いいのよー。あたしが好きでやってるんだもん。あ、でね、これがあたしの。ちょっと大人っぽいレトロ柄なの」


濃紺に朝顔が描かれた浴衣を体に当てて黄色の鮮やかな帯を引っ張り出した。


飾り帯は使わずに、アクセサリーを少し大ぶりのものにしたらしい。


「あ・・似合う!!みゆ姉の黒髪とも映えるー」


幸はもともと色白で、そのうえ艶のある綺麗な黒髪なのだ。


和装には持って来いの容姿。


初詣で着物を着るたび、まわりがざわついていたことを思い出す。


・・・しなやか・・・ってこういうこと言うんだろうなぁ・・・・


桜は浴衣を纏う従姉の艶姿を想像して思わずほくそ笑む。


一鷹が見たら間違いなく見惚れることだろう。


艶っぽい笑みを浮かべて、姿見の前でニコニコ笑う幸。


最近ますます綺麗になった彼女だから、きっと周りが放っておかないはずなのに。


早くしないと取られちゃうわよ?


当然ながら、自分が側に居る限りヘンな男は近づけないつもりだけれど、大人は子供より誘惑が多いのだ。


そもそも幸が身近にいる従弟にいつの間にか惹かれている事にまだ気づいていないというのが問題だ。


こればっかりは桜が口を出すわけにいかない。


下手をしたら全否定して、始まる前に終わってしまう可能性もあるからだ。


どこまでも頑なで真っ直ぐなこの従姉は、自分が”恋じゃない”と決めたら意地でも嘘を吐きとおす。


自分にも、周りにも。


しかも、更に厄介な事に絶対に他人の説得には折れない。


穏やかで人当たりの良い雰囲気とは裏腹に、内に秘める意思は呆れるほどに強固だ。


簡単には折れないし、曲げない。


だからこそ、容易に想像できるのだ。


自分の気持ちの変化に気づいて、焦って混乱する幸の姿が。



出来れば、穏やかに幸せな恋をして欲しい。


そして、ちゃんと幸せになって欲しい。


いつも”自分以外”の誰かの為に必死な彼女にはとくに。



★★★★★★



夕飯の後、二人で着せ替えごっこが始まった。


着付けが出来る幸が、手際よく買ったばかりの浴衣を桜に着せて、八重文庫結びに帯を結ぶ。


更にその上に、流行りのプチヘコを蝶々結びにする。


浴衣でも洋服でも、必ず流行をポイントに取り入れるのが彼女らしい。


しかも、決して華美でなく桜に馴染む物を選ぶから流石だ。


鳩尾当たりで締まっていく帯を見下ろして桜が眉根を寄せた。


「くるしい・・・」


「これでも緩めなのよー?ちゃんと着付けるなら、タオルで補正しないとだめだから、もっと暑いし苦しいわよ?」


「・・・うそ・・」


「ほんとーよ。可愛くするのも大変でしょう?」


帯を整えて、鏡に映る桜の姿を確認して幸が満足げに頷く。


なんて良い出来栄え、やっぱりこの柄にして正解だ。


カタログを確認した時から、桜のイメージにぴったりだと思っていたのだ。


小物も思う通りの物が見つかったし、幸的花火大会お出かけルックは完璧。


自分の姿を鏡越しに眺めて桜が長い髪をねじり上げた。


「ちょっと髪纏めようかな・・」


「項が見えた方がいいから、クリップで留めてみたら?すっきり見えていいわよ」


「部屋にあったよね?」


「ラインスト―ン付いてる可愛いのがあったでしょ?」


「ちょっと見てくる」


部屋に戻る桜を見送って、自分の着付けに取りかかる。


1年ぶりの浴衣だ。


悲しいかなここ数年、プライベートでは着ていない。


去年は夏の納会で同期の女の子たちと着たけれど・・・プライベートで着るのって何年ぶり?


数年前の恋を思い出す。


仕事がまだそんなに忙しく無くて、定時で大急ぎで更衣室に飛び込んだっけ?


着物教室で覚えたばかりの着つけを思い出しつつ四苦八苦。


何とかメイクも髪型も直して待ち合わせに向かったのは・・・3年前位?


余りに昔過ぎて朧げにしか思いだせない。


でも、買っちゃったけど、いつ着るの?


鏡の中の自分に問いかける。


正直今年の予定は何も立っていない。


本当は桜にだけプレゼントするつもりだったのだ。


つい、気に入った柄があったので自分用にも新調してしまったけれど。


きっとさぁちゃんは冴梨ちゃんや絢花ちゃんとお祭りに着て行くだろうし・・


折角なら、と用意した自分の浴衣が突如宙ぶらりんになってしまって、幸は思案顔になった。




★★★★★★



ねじった髪を後ろで留めて、おくれ毛を指先で整える。


「・・・いいかも・・・」


少し立ち位置をずらして後頭部を確かめる。


思いのほか綺麗に纏まったらしい。


歩きづらいけど、鏡に映った自分はいつもより少し大人びて見えた。


・・・会いたいな・・・


煙草を吸う右手でくしゃりと髪を撫でられる、あの感覚を思い出す。


「!」


思わず頬を叩いた。


最近、ふと気づくといつも考えてしまうのだ。


謝恩会からこちら、昴の事ばかり思い出す。


別に意味は無いはずだ、謝恩会に来たのだって、結局は一鷹たちの付き添い。


”ついで”


どんなに優しくしてくれても、どんなに甘やかしてくれても、それは彼の”仕事”のうちだ。


浅海さんが優しいのは、志堂さんが、みゆ姉がいるから。


あのふたりが居なければ、そもそも彼はここにいない。


・・・だめだ・・・好きにならない。


あの人じゃだめ。


恋は出来ない・・・出来ない。



何もかも違う、自分はまだ高校生で、志堂の事も、そもそも社会人の事も仕事の事も何も分からない。


自分と彼を隔てる物は余りに大きい。


そして、桜はそれを飛び越えるすべを持たない。



好きになったって傷つくだけだ。


遠い場所にいる彼の事を思って悲しくなるだけだ。


今の桜には、傷つく勇気も余裕もないのに。




★★★★★★’



インターホンが鳴った。


こんな時間に誰だろう?


「みゆ姉、お客さんかなー?回覧板?」


帯どめを留めながら廊下に出て、部屋から顔を出した桜を制して、玄関に向かう。


「あたしが出るからいいわ。はーい」


ドアの向こうに向かって呼びかけると馴染みの声が聞こえた。


「浅海です」


「へ!?」


声を上げたのは桜だ。


予想外の訪問客に一気に心拍数が上がる。


「遅くにいきなり申し訳ない」


「え、昴くん?」


驚いた声を上げて幸がスリッパを脱いで、つっかけを履いて上がり口に下りる。


「ちょっと待ってねー」


急いでチェーンを外す後ろで桜は内心大声で叫んだ。


うそ!!!


なんで!?


待ってよ!!このタイミングは困るよ!


どんな顔すればいいのよ!!


ちょっと待ってみゆ姉!



けれど、桜の心の叫びむなしくあっという間にチェーンを外した幸はあっさりと鍵を開けてしまう。


ドアを開けると目の前にはカゴ入りの果物を持った昴が立っていた。


いつものように足を踏み入れようとして失敗する。


目の前に立つ幸と、桜の格好を呆然と見つめる。


幸がにこりと笑って言った。


「いらっしゃい」


「あ・・こんばんは・・」


呆然としたまま答えた昴の表情には気づかずに桜が問いかける。


「どうしたの?浅海さん」


「佐代子さんから預かりもの・・・ってどーした?浴衣なんか着て」


「あー・・・みゆ姉が買ってくれたの」


ここでようやく桜の心臓が落ち着きを取り戻し始めた。


「さぁちゃんが、ここ最近浴衣着てないって言うからねー。やっぱり1年に1回は着ておかないとね。って思い立って、自分のも買っちゃったんだけど・・」


「上手でしょ?帯もすっごい可愛いの」


袖を持ち上げてくるりと一回転して笑ってみる。


いつも通りに。


昴は桜の姿を上から下まで眺めてにこりと笑った。


桜の好きな、穏やかな笑みだ。


「似合うなー。良い色だ、お前に合ってるよ。幸さんの見立ては最強だな」


「・・・可愛い?」


「うん、可愛い」


臆面もなくそう言って、いつもの癖で桜の髪に手を伸ばす。


「あーら、さぁちゃんだけ?」


受け取ったかごを手にリビングに向かいながら幸がにやりと笑う。


「勿論、幸さんも似合ってますよ、凄く」


「ありがとう。それにしてもこんなに沢山頂いていいのかしら?」


カゴの中身に視線を移した幸が色とりどりの果物を見つめる。


グレープフルーツにスウィーティー、洋ナシに林檎、さくらんぼ。


一度ではとても食べ切れない程の量だ。


「元はこの倍以上あったらしいから。俺のトコと一鷹と佐代子さんとこで山分け」


「わー贅沢ーね。有難く頂くけど・・明日の朝はフルーツジュースかなー?」


「・・・」


「さぁちゃん?フルーツジュース嫌いだっけ?」


心配そうに問いかけた幸に慌てて首を振る桜。


けれど、視線はすぐに昴の横顔に戻ってしまう。


前髪を緩く撫でるしぐさも。


昨日とおんなじ・・・


コレに意味なんかない。


嫌ってほど分かっているのに。


この仕草に素直に喜んでいいのか、見込みが無い事を悲しんでいいのか分からない。



褒められたのに。


余計に思い知る。



あたしは、この人の特別じゃない。


特別じゃないから、こうしていられる。


この距離に居られる。


それなのに、もっと近くに居たいって。


望んでしまうのはなんでだろう。


贅沢だって、分かってるのに。


傷つくだけだって、知ってるのに。


確かめるまでも無いのに。




☆★☆★



「幸さん、俺、すぐ帰るんで」


「え、そうなの?お茶位飲んで行けば?」


幸の誘いに首を振った昴は丁重に辞退した。


こんな格好の幸と仲良くお茶をしたなんて知られたら、一鷹に何を言われるか分からない。


最近の一鷹の独占欲は半端じゃない。


”逃げない”と決めたらからだろうか、彼女の仕事関係の付き合いにすら嫉妬する。


勿論、幸の前ではおくびにも出さずに聞き流すのだが。


傍から見ているとぞっとする。


その穏やかな笑顔の裏にある一鷹の本音の表情を知っているからだ。


”やっぱり男性目線だと、全然違うアイデアが出てきたりするのよねー”


企画会議で上がった案件について楽しそうに話す幸の横で


”視点が違うからでしょうね”


なんて平然と受け流しながら、その手が本当は彼女の視線を自分以外の者に向けさせない為に必死である事を知っているから。


だからこそ、ここは一刻も早く逃げなくてはならない。


生憎と、昴は一鷹にこの件で上手に嘘をつける自信が無かった。


きっと時間を見計らって一鷹から連絡が入るだろうし。



「一鷹と佐代子さんがどうしても食べさせたいって言うから、急遽こっちに寄る事になっただけで」


「お仕事の後でお疲れだったのに、ごめんなさい。尚更お茶位飲んで行って?」


「いや、こっちこそ。本当は事前に電話一本入れようと思ってたんだけど。何せ向こう出る時もバタバタで」


そう言って、携帯を取り出した。


「ほんと、綺麗な色の浴衣ですね。さすがアパレル、見惚れるな」


「言い過ぎよー、けど、ちょっと奮発したから褒められると嬉しいわ」


満更でもなさそうに幸が微笑む。


そして廊下を戻ってきて、スリッパを取り出そうと屈みこむ。


慌てたように昴が言った。


「ほんとに、幸さん、仕事も残ってるから」


「でも・・さぁちゃんだって寄ってって欲しいわよね?」


視線を上げて桜に問いかける。


「そんな・・忙しいの?」


「超多忙なんだよ」


昴がおもむろに携帯を取り出した。


「ちょっと桜とふたりで、並んで。せっかくめかし込んでるんだから、佐代子さんたちにも見てもらわないと。独り占めは勿体ない」


とりあえず証拠写真として納めておこう。


これは何かの時の免罪符になるかもしれない。


幸さんの浴衣姿見たぞーなんて言おうもんなら・・・


考えただけで恐ろしい。


玄関でちゃんとすっ飛んで帰りました。


というその証拠でもある。



からかうのは楽しいが、凹まれると困る。


仕事であれば、いや仕事以外でも殆どの事はドライな程に割り切れる彼が、唯一、冷静な判断力を無くしてしまう相手。


身動きが取れなくなる位に、相手を思い過ぎてしまう唯一の想い人。


この女性に関してだけは、引っ張り上げるのは容易でないのだ。


適当な慰めや、誤魔化しはきかない。


あの男は。


「え・・・でも、ちゃんと着てるわけじゃないし・・・髪もそのままだし・・」


困惑気味の幸の腕を引っ張って桜がポーズを取る。


「大丈夫、十分だから」


携帯を翳して見せた昴が自信たっぷりで応える。


桜が妙にはしゃいで言った。


笑顔を浮かべて幸を誘う。


「そうそう、もうちょっと笑ってよ!せっかく着たんだもん。年に何度もあるわけじゃないんだから、ね?記念に撮っとこうよ」


「そうね・・さぁちゃんと浴衣で写真一緒に取るのも初めてだしね」


気を良くした2人を携帯に収めながら、来る途中で目にした花火大会の日程を思い出す。


地元で毎年開催される一番大きな花火大会だ。


屋台もかなりの数が出るし、この日ばかりは終電間近まで、電車が込み合う。


仕事帰りの者にとっては有難くないイベントだが、若者やカップル、家族連れにとっては夏の大事な風物詩だ。


「これ着て、週末は花火大会とか?」


昴の質問に、幸と桜は顔を見合わせた。


「あたしが勝手に用意したたけだけど・・さぁちゃんは、絢花ちゃんたちと行くんでしょう?」


幸の質問にぶすっとしながら桜が答える。


「毎年恒例の女子会の予定だったのに・・・ふたりとも彼氏と行くってー。良いんだけどさぁ、別に」


ちっとも良くない口調で応えた桜の髪を撫でながら幸が呟く。


「あらら・・」


明らかにしょげた桜の顔を見ながら幸は名案とばかりに両手を打った。


「じゃあ、あたしと行こう!」


「・・・ほんと?」


「うん、さぁちゃんに買うついでに買ったようなもんだから、あたしも着て行く予定

があったわけじゃないのよね・・・せっかくだし、ふたりで花火見に行こう。女同士も悪くないわよ?」


「知ってるし」


「もう、不貞腐れないの」


「不貞腐れてないよー」


「あたしと一緒じゃ不満?」


「そんなこと無い!嬉しいよ!浴衣もすっごく嬉しいし・・いっぱい喜ばせてくれてありがとう、みゆ姉」


すっかり機嫌の直った桜に向かって、みゆ姉が約束ね、と笑顔を向けた。



☆★☆★



彼にとって、あたしは子供で。


きっと視界にだって入っていない。



一緒に行って?なんて言ったらどーするだろう。



あっけらかんと、いいよ。


っていうのかな?



うん、きっとそうだ。


言葉の裏側になんて気付かない。



いつもみたいに、保護者代わり。


でも、欲しい言葉はそれじゃない。


それじゃ嫌なの。



あんなに否定していたのに。


違う、こんなの、もう”恋”だ



抗ってあがいたって。


もう落ちてる。



浮きあがれないほど深く。



★☆★☆


見えてしまった自分の気持ちを必死に押し留めるように桜がぎゅっと幸の手を握った。


「楽しみだね」


小さな小さな声。


「うん、金曜は絶対に定時で帰るから!」


「待ってるね、髪型も考えなきゃ」


「可愛いの雑誌で探そうね」


きゃっきゃとはしゃぐそんなふたりを眺めながら、昴は頭の中で金曜の一鷹のスケジュール調整を始めていた。


会議が3つとそれに使う資料と報告データの確認と打ち合わせ。


どれなら移動が可能かを必死に考える。


一鷹に言えば迷わず”前日徹夜します”とかいうとんでもない台詞が返って来る事は必須。


自分の仕事はその前に、出来る限りの調整を行う事だ。


今日だって本当は一鷹が出向きたかったに違いないのだ。


一言”お願いします”とだけ言った一鷹の横顔を思い出す。



なんとかしてやらないとなぁ・・・


そろそろ少し位報われてもいいだろう。


普通のカップルとまでは行かなくても、夏の想い出位作らせてやりたい。




こうして、緩やかに夏と恋は訪れた。

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