第11話 大人と子供と謝恩会
大人には大人の、子供には子供の。
それぞれの領域というものがある。
分かりやすくいうと、大人にとっての会社。
子供にとっての学校。
そこに一歩踏み込めば、お互いの理屈は全く通用しないわけで。
それによって生まれる障害やすれ違い。
そして、ふたりの間に出来た溝。
一足飛びに大人になりたいと思っても到底無理だと思うから。
だから、せめて、訊きわけのよい子供でいたいと思うのだ。
無理だとしても。
☆★☆★
期末試験も終わって、終業式を待つばかりとなった7月の初め。
定期検診の結果も問題なしで、いつもの診察室を出た後、桜はまっすぐロビーに向かわずに診療棟の奥へと進んで行った。
小さなキッズスペースに入る。
子供向けの待合いだが、今日はほとんど使われていない。
本来なら全く用事など無いのだが、ここにやってきた目的は・・・ひとつ。
目の前に見える大きな黒い楽器を前に桜は腕まくりした。
☆★☆★
ロビーを覗いて、桜がいないことに気づいた昴は元来た道を戻り始めた。
ここにいないとすると・・・・どこだ?
自分が煙草を吸っている間は、大抵売店かここで待っていたのに。
長い廊下を、きょろきょろしながら進んでいく。
と、すぐ右手の部屋からピアノの音が聞こえてきた。
どこかで聴いた、けれど、名前の知らないクラッシックの・・・
すりガラスの向こうを見眇めると、どうやら弾いている人物が探し人のようだった。
昴はドアをゆっくりと開いた。
・・・やっぱり。
エレクトーンの前に座っている桜を見つける。
こちらに気づくことなく向けられたままの背。
小気味良い音を奏でるエレクトーン。
音楽には全く疎い昴なので、曲名もよくは知らない。
それでも、弾き手の上手い下手位はそれなりに分かる。
多分、何年も前に習っていたのだろう。
”前に”というのは、以前京極の家に、荷物を取りに向かう幸と共に出向いた時には、ピアノやエレクトーンは発見できなかったからだ。
小学生か中学生位までピアノ教室にでも通っていたのだろうと勝手に予想する。
桜の手元を眺める昴の視線に最後まで気づかずに、迷うことなく滑らかに動く指が高音の最後の1音を叩いて、そっと指を離した。
曲が終わった。
桜が鍵盤から両手を下ろしてホッと息を吐く。
それから少し離れた所に立つ誰かの気配に気づいて振り返る。
「あ、浅海さん」
探させたのだろうか?と問いかける前に昴が口を開いた。
「上手いなー。おまえ、ピアノ弾けたのか」
右手を伸ばして、適当に鍵盤を叩く昴。
運指法もなにあったもんじゃない。
人差し指でポンポンと鍵盤を弾いて見せる。
迷わない指の動き。
何度か音を響かせてから、ドの音を見つけると、ドレミ、ドレミと馴染みのチューリップを弾き始めた。
その様子を横目にくすりと笑った桜は、椅子から立ち上がってピアノに乗せたままにしていたカバンを取り上げる。
「中学校まで習ってたの」
「へえ・・ピアノ好きだったのか」
「実はあんまり。お母さんが、お転婆なあたしを心配して、女の子らしいお稽古させようとして選んだのが、ピアノだったの。でも、止めてずいぶん経つから、練習しないと」
ふいに出来てきた母親との記憶。
昴は話題を振った事を瞬時に後悔した。
そんな彼の表情を見て、桜が苦笑交じりに笑う。
「そっか・・どっかで弾くのか?」
昴はそれ以上何も言えずに桜の髪をするりと撫でた。
「来週の謝恩会で、うちのクラス合唱だから。あたしは伴奏、絢花は指揮、冴梨は抜群の歌唱力を買われてソロパート、歌うの」
「へー・・・謝恩会なんかあるのかぁ。さすが聖琳女子だなー・・」
「学期ごとにあるから、準備も大変だし、毎回歌うたびに冴梨はコーラス部から逃げ回る羽目になんのよ」
「そりゃ大変だ・・・当然幸さん見に来るんだろ?」
妹至上主義の彼女のことだ、忙しい仕事の合間を縫って会いに来るに違いない。
今日みたいに出張でもない限り。
「うん、金曜の午後からだし、絶対仕事抜けてくるって言ってた」
・・・ということは、恐らく一鷹もこっちに寄ることになるだろう。
あいつが幸さんと一緒に居られる時間を見過ごすわけが無い。
となると、俺が行っても別に問題ないよな。
誰にともなく言い訳しつつ、一週間後の予定を思い出しながら、昴は金曜午後のスケジュールを組み立て始めた。
夕方から絶対外せない会食が入ってるから桜のクラスがそれまでの時間帯であるかも確認しなくてはいけない。
一鷹は多少の無茶はやらかすだろうが、それでも調整出来ない予定は必ず出てくるのだ。
そして迎えた謝恩会当日。
「俺、女子高に入るの初めてだ」
「俺もですよ、ある意味禁断の園だな」
「保護者ですら、身分証明を提示させられるなんてなぁ。どんだけ厳重警備だよ」
「仕方ないですよ、今や聖琳女子の生徒は希少価値大ですからね。ここまでのエスカレーターって県内でも他に1校しかないらしいですし」
「最近は少子化だしなぁ」
「どこも合併をして生き残りにかけてるのに、こうして経営を続けていけるだけでも凄い事ですよ。伝統や歴史だけじゃこうは行かないでしょう」
「だな」
頷きながら乙女の楽園に踏み込む。
蔦の張ったレンガ造りの重厚な塀の向こうに見える、古い校舎を見ながらしみじみと語る二人を尻目に、幸は懐かしい雰囲気を楽しみながらどんどん先へと歩いて行く。
受付には、すでに何人もの保護者が並んで待っていた。
伝統のある女子高だけあって、必ず受付で生徒の氏名を記載してある招待状の提示を求められる。
更に、保護者の顔を逐一見ている教師が服数人。
少しでも不審な素振りをしたら即別室に連れて行かれる事になる。
さすが、進学校だけあって、来訪者は皆スーツや上品なワンピースといった正装だ。
受付テーブルに付いていた教師らしき中年の女性が、幸に気づいて声を上げた。
「安曇さんじゃない」
「倉橋先生!ご無沙汰してます!」
駆け寄ってきた幸の手を握って、嬉しそうに眼を細める女教師。
受付で名前と招待状のチェックをしていた生徒の隣で進行表を渡していた別の生徒が卒業生の方ですか?と尋ねた。
「そうよ、あなたたちの先輩よ。クラス委員まで務めた、立派な女子生徒だったんですよ」
「ちょっと、先生、言いすぎですってば」
慌てる幸に茶目っけたっぷりに微笑む教師。
「あらあら、本当の事ですよ。ただし、ちょーっと、抜けたところがある、可愛い子だったのよ?」
「もー・・先生一言多いです」
苦笑する幸と、思い出話に花を咲かせる教師。
一鷹は後ろでそれを聞きながら、やっぱり、と率直な感想を思い浮かべた。
しっかりしているのに、どこか抜けていて放っておけない人なのだ。
真っ赤になった幸が小声で言い返す。
「従弟もいるのに、滅多な事言わないでください」
その言葉に、倉橋先生は幸の後ろに並んだ2人に目をやった。
目の前で繰り広げられる会話につられて、ちらっと2人に視線をやった受付の女子生徒2人がぱっと顔を赤くして眼を伏せる。
・・・新鮮な反応だなー・・・
「お二人とも、親戚の方なの?」
御世辞にも、似ているとは言えない2人の姿に小首を傾げた先生に応えるべく一鷹が人の好い笑顔で口を開いた。
「僕が、彼女の母方の従弟になります。こっちは僕の部下です」
軽く会釈して見せた昴に、同じように挨拶を返して、先生は幸に向き直った。
「それじゃあ、この方が、京極さんの後見を務めて下さってる・・?」
「そうです。あたしじゃ力不足な部分が沢山あるので、力を貸して貰ってます」
「そう・・・よかったわ・・彼女の事は学園長も気にかけてらしたのよ。今ではすっかり元気になって担任共々安心してますよ」
「ご心配おかけしました」
「あなたがいて、きっと京極さんも心強いでしょうね」
まっすぐに幸を見据えて微笑む教師に笑顔で応えつつ、幸は頭の中で自問自答繰り返す。
・・・力になれているんだろうか?
そんな幸のすぐ側で、同じように一鷹も思っていた。
助けになれているだろうか?
ずっと、彼女からは貰うばかりだったから。
こうやって、彼女に何か(直接的ではないにしろ、彼女の望む事を)してあげることができるのは、純粋に嬉しい。
桜嬢の幸せは、幸さんの幸せとまっすぐに繋がっていると確信できる。
話し込んでいた教師が、時計を見てから告げた。
「あと2クラスで京極さんのクラスの発表ですよ。遅くまで残って、高遠さんたちと練習していたみたいだから、きっと上手くいくわ。楽しみにしていてちょうだい」
「家に帰ってからも譜面を片手に、CD聴いて練習してました。ご飯も忘れちゃうくらい夢中になってて・・そうやって時間も忘れる位、熱中出来る事があって、今は本当に良かったと思ってるんです。何もしないでいると、怖い事を思い出しそうで。しんどいとか、疲れたとか、口ではそう言ってますけど・・やっと高校生らしい充実した毎日を取り戻せて、本当は誰より、さぁちゃんが嬉しい筈なんです」
「そうでしょうね。彼女はあなたに似てとっても責任感が強いから。時々心配になるけれど、ちゃんと見守ってくれる保護者の方達がいるのなら、安心だわ」
ぐるりと3人の保護者を見渡して教師は自信たっぷりに言った。
静まり返ったホールに、ピアノの伴奏と冴梨の声が穏やかに響く。
鍵盤を叩きながら、桜は親友の声に聴き惚れそうになりながら、懸命に指を動かす。
冴梨の声が好きだ。
決して強い声では無いけれど、よく伸びる透明感のある声に、この曲は一番似合う。
ホールに響く冴梨の声を誰より誇らしく思いながら、最後まで丁寧に伴奏を続ける。
ふと、昔の記憶が蘇った。
そういえば、1年生の時の謝恩会で初めてあたしたち喋ったんだ・・・
保護者に向けて、学期ごとの成果を報告する為の謝恩会。
生徒の一番の実力の見せどころだ。
教師達もこの日の為に、事前準備に追われる。
毎年謝恩会で披露される合唱は、一番の目玉だ。
自己紹介で、ピアノ歴10年です、なんて言ったせいで抜擢された桜の伴奏と、中学の時、吹奏楽部の部長だった絢花と、お茶会ついでに、こっそり制服のまま行ったカラオケで、最高得点を出した冴梨。
そんな風にして、顔を合わせてからもう何回もこうやって一緒に演奏してきた。
何回やっても毎回緊張するけれど、一番の特等席で冴梨の綺麗な声が聞けるのは嬉しい。
きっと絢花も同じ気持ちだろう。
ちらりの指揮者を見やると、同じように口元に笑みを湛えている。
大満足、大成功ってトコよね?
最後のフレーズが静かに消えて、ピアノが終わる。
そして、予想通りの大きな拍手。
桜は大きく深呼吸して立ち上がる。
うん、何度やってもやっぱり素敵だ。
冴梨と、絢花がいるから立つ事の出来るステージ。
ここに戻って来られて本当に良かった。
胸を張って挨拶をする絢花の背中を眺めながら桜は客席に視線を送る。
そして、朝から”絶対行くからね!”と話していた大好きな人を見つける。
・・・あ、みゆ姉みっけ。
そしてそのまま視線を戻そうとして、その横にいる意外な人物にも気づいた。
思わず声を上げそうになって必死に飲みこんで、皆と同じようにお辞儀する。
が、気づいてしまったらもう遅い。
見間違いなんかじゃない。
1人は分かるけど、何で一緒なのよ!?
完全予想外の人物の出現に、さっきまでの冷静な思考は急激にフル稼働し始める。
一気に心拍数が上がる。
今更緊張したって遅いのに。
・・・なんで、志堂さんも浅海さんもいるの!?
「さぁちゃん、絢花ちゃん、お疲れ様」
ホールを出てすぐのところで、幸たちが待っていた。
冴梨は、毎度お馴染みのコーラス部からの勧誘から逃げるために一足早く教室に向かっている。
隣を歩いていた絢花が、幸たちに頭を下げる。
「いらしてたんですね」
「仕事、ちょっとだけ抜けて来たの。指揮者、カッコ良かったわよー。冴梨ちゃんの声も、相変わらず綺麗だった」
「ありがとうございます。冴梨に伝えておきますね!」
「ホールで聴くのは贅沢だけど、カラオケで目の前でも聴きたいわって伝えてね」
「喜びますよ、冴梨」
挨拶を終えた後、気を利かせた絢花が先に教室へ戻って行く。
「ピアノ、上手だったわ。残って練習してたんだって?キーボードくらいなら家にも置けるのに・・ずっと譜面読みだけしてたでしょ?」
幸の言葉に、桜はぎょっとし、一鷹と昴はいつものことだと苦笑を浮かべる。
「たまにしか弾かないのに、要らないから!しかもあのマンションの何処にそんな余裕あんのよ!」
「でも、指固くなるでしょ?折角あんなに上手なのに勿体無いわよ。あたしもたまにはさぁちゃんのピアノ聴きたいし。リビングの棚片付けたらキーボード位置けるわよー」
のんびりと応える幸。
「音楽室で弾くので十分だから!」
いい加減、この従姉が自分に甘い事は認識済みの桜だが、この発言には心底驚いた。
「ホントに?我慢してない?」
「してないし!そんな我儘言えないよ!」
「我儘言って欲しいのよ」
「あのね・・みゆ姉、あたしちっちゃい子じゃないんだからっ」
「でも、桜の我儘叶えるのはあたしの特権でしょう?」
尚も言い募る幸。
隣の一鷹が眉間に皺を寄せるのを、見ていた昴はこっそり溜息をついた。
・・・俺には我儘なんて言ってくれない癖に・・
そんな考えが浮かんだ自分自身に苦笑する。
相当幸に影響を受けているらしい。
桜をいつの間にか甘やかす対象として見ている自分が居た。
それは、違和感を覚える暇も無い位自然な流れだった。
「本当に要るなら、ちゃんと買ってって言うから!みゆ姉だって、学校に防音のピアノ個室がいくつもあるの知ってるでしょ?今はそれで十分なんだってば」
「でも・・・」
まだ何か言おうとする幸の言葉を遮るように、別の声が割り込んできた。
「志堂様!いらしてたんですか」
その声に、一鷹と幸が同時に振り向く。
桜が小さく学長・・・と呟いた。
一鷹が、気付かれないように、小さく舌打ちする。
「しまった・・・先に挨拶に伺うべきだったな。桜嬢、お疲れ様。もし、ピアノが弾きたいなら、家に来たらいいよ。誰も使わない古いのがあるから。頼めば調律もして貰えるしね。このあたりを妥協点にしたらどうかな?幸さん」
そう言うなり、学長の方へ歩き出す。
「けど、ほんとに欲しくなったちゃんと言うのよ?じゃあ、あたしもご挨拶に行ってくるわね!」
幸も慌てて後を追った。
残った昴は、2人の背中を見送ってそれから桜の腕を掴んで歩き出す。
てっきり一鷹達の後を追うと思っていた桜は、昴の行動に驚いて声を上げた。
「え・・・ちょっと・・」
「難しいことは大人に任せとけ。学長の話なんか聞いても、面白いことひとつもないだろ?」
「・・そうだけど。一応、志堂さんの部下って事で一緒に居た方がいいんじゃないの?」
「俺が行ったって意味何かねェよ。学長先生がゴマ摺りたいのは俺じゃなくて一鷹。幸さんはお前の保護者として行くのは当然だろうけどな」
すたすたと歩く昴が、ちらりと後ろを振り向いてから付け加えた。
「それに、あそこにいるだけで、目立つんだよ。父兄ったって、ほとんど女ばっかだろ?」
「あー・・・うん」
確かに、卒業生や父兄も殆どが女性もしくは妻同伴の中年男性ばかりだ。
さっきから興味本位な視線が突き刺さって来てどうにも痛い。
「じゃあ、裏門の方に行く?」
少しでも人気のない場所をと提案した桜に向かって昴が面白そうに笑う。
「女子高探検も悪くないな」
「探検って・・どこの学校も一緒でしょ」
「こんな立派な造りじゃなかったよ」
「・・・浅海さんて私立?」
「男子校な、一鷹とおんなじ。ヤローばっかってのは、味気も色気もないぞー」
「何と無く暑苦しいイメージ」
「当たってる」
苦笑いした昴に、桜がぐるりと校内に視線を送ってから言った。
「女子高も五月蠅いけどね」
中庭を抜けて、校舎裏に出ると、殆ど人がいない。
数人の生徒と保護者が裏門の近くで立ち話をしている。
のんびりと歩きながら、昴は桜の横顔を窺った。
志堂の後見を得て、復学することが決まった時の学長と、理事長の顔といったらなかった。
満面の笑みで、桜のことを褒め称え、彼女の学校生活を全面的にサポートすることを申し出た。
勿論、そういう万全の態勢を整えるために志堂の名前を使い、寄付を行ったのだ。
こういう使い方もあるんですねぇ・・・飄々と言ってのけた一鷹。
安曇幸の後見とは天と地ほどの差がある。
それを分かっていたからこそ、彼女も一鷹の申し出を断らなかったのだろう。
後ろ盾を持たない、ただのOLでは歯が立たない。
桜にはそういった話は全て伏せてある。
ただ、後見人の名前が必要なので、一鷹と幸の連名にしたと、告げてあるだけだ。
余計な詮索はさせたくなかった。
☆★☆★
「ピアノ・・・いーのか?」
「うん、弾きたくなったら音楽室行くし」
「お前の我が儘ききたい人間は結構いるんだからな」
「知ってるよ。みゆ姉と志堂さんでしょ」
あっけらかんと答えた桜をじっと見下ろしてから、昴が肩を竦める。
「・・・俺も加えとけ」
そう言って、桜の髪を撫でる。
「え・・・」
訊き返そうとしたが、声にならなかった。
それを問うたら、何かが微妙に変化すると思った。
それは予感でしかなかったけれど、その先に起きる何かは確信出来た。
そして、口にしたら、戻れない事も。
胸の奥に生まれた小さな灯。
抱き締めたらきっと、今ならあっという間に消えてしまう。
けれど、どうしても消したくない。
だから何て答えて良いのか分からない。
どれが正解なのか、正解を口にしてよいのか分からない。
★★★★★★
黙り込んだ桜を横目に、昴は思う。
いつからだろう、癖になってるな・・
眠っている彼女の髪を撫でてから、側にいる時は無意識に触れてしまう。
桜は別段気にした様子もなく、ちょっと俯いてから呟いた。
「・・・知ってる」
少し笑みを浮かべてくすぐったそうに。
昴は、そんな桜を子供をあやすように後頭に腕を回して抱え込んだ。
「あたし・・・子供だぁ・・」
おどけたような桜の言葉。
子供でいれば、気づかなくて良い事がある。
昴は桜を見下ろして、小さく言った。
「お前は、それでいいんだよ。許されるうちは、ちゃんと子供でいろ」
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