歪な波長
岸亜里沙
歪な波長
社会人になって、お互い仕事が忙しくても、月に一度は予定を合わせて食事に行くような仲の親友です。
そんな彼女とランチをしている時、彼女が深刻な顔をして私に話しかけてきました。
「ねえ
「えっ、そうなの?」
「うん。結婚して早い内には子供欲しくてさ。でもなかなか授からないなって思って検査してみたら、私どうも赤ちゃんが出来づらい体質みたいで」
「そうなんだ」
暗い顔をしている親友を見るのは、私も凄く心苦しかったです。
結婚していない私が、どう声をかければ良いか分からず、単調な返事しか出来ませんでした。
「ようやく不妊治療も保険適用になるみたいだけど、対応が遅いわよ。私みたいに子供が欲しくても、保険適用外だったせいで諦めちゃった人もきっといたはずよ」
「確かに。日本は少子化とか言ってる割に、対応が遅いよね」
「私思ったの。どうして不妊っていう言葉が最近になって使われるようになったのかって。お母さんの時代には、そんな言葉ほとんど使われなかったみたいだし」
「言われてみれば」
「不妊の原因ひとつ目は、働く女性が増えた事だと思うの。世界的に見ても、女性が重要な役職に就く事が増えたでしょ。そのせいで過度なストレスが生じてしまって、妊娠しづらい人が増えているんだと思うわ」
「確かに。ストレスって体にも影響を与えるよね」
「そう。だから先進国の出生率は、日本以外の国でも低いらしいわ。海外では日本より補償の手厚い国もあるけど、でも増えてはないらしいの」
「知らなかった。世界的に出生率って低くなってるのね」
「うん。あと不妊の原因で、私が密かに思っているのが、ケータイよ」
「え?」
「ケータイって人体に有害な電波を発してるらしいの」
「どういう事?そんな話聞いた事ないけど、本当なの?」
「私も正直分からないわ。所謂、都市伝説の部類なのかもしれないけど」
「きっとそうよ。だってもしそうなら、ケータイなんか禁止になるはずでしょ?」
「でもケータイの普及と共に不妊で悩む人が増えたと思わない?まあ、ちょうどその頃から働く女性の割合が増え始めたからかもしれないけど。でもさ最近、変な人も増えたじゃない?平気で通り魔する人とかさ。絶対ケータイから有害な電波が出ていて、私たちの体や神経に悪影響を与えてると思うの」
「それは・・・」
「アプリの位置情報や通話機能とかも、監視目的で使われてるらしいわよ。だから最近のケータイって、本当に危ないものだと思うわ」
佳苗の勢いに気圧され、私は何も言えませんでした。
「だから私、今試しにケータイをなるべく持たないようにしてるの」
「だから佳苗にしては珍しくなかなか既読が付かなかったのね」
「うん。ゴメンね。でももしこれで私が自然妊娠出来たら、絶対ケータイのせいよ。だってまだ仕事は辞めてないしさ」
「確かに、そうかもしれないわね」
「だから琴音、もし私が自然妊娠した暁には、この話を書いてほしいの」
「え?」
「
「分かった。もし佳苗が妊娠出来たら、この話、小説にするわ」
歪な波長 岸亜里沙 @kishiarisa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます