第14話 残念な人は何をしても残念に見えるんです。

 どの位、揺られたかわからないけど、心地のいい揺れが私を眠りに誘う。ステータス異常無効のスキルを持ってしても人間の本質的なものまでは変えられないのか〜なんて思いながら安心しているわけでありますよ。


 馬車が止まり、足の紐が解かれて私は眠さと戦いながら体を起こしてみた。目隠しされているからどこかなんてわからないけど、

(そもそもどこかもわからないけど)


「おい、着いたぞ、起きろ」


 この匂いは兄貴の方か。この人だけに結界(小)を使いたんだけどダメかな? もう少し身嗜みという言葉を知って欲しいんですが。


「兄貴、親分に言われてるでしょ? 女性には優しくって」

「そうだった。でもよ〜すぐに捨てられる玩具に優しくしろっていうのはな」

「俺らは大事に運ぶってのが仕事なんですよ」

「だよな〜、くぅぅ。そのあとのおこぼれ、楽しみにしてようかな〜」


 ごめんなさい。実は息を止めてます。そろそろ限界なんですけど。


【※スキル 体内酸素構成(小)を覚えました】


 来たーーーーー都合の良いスキル。この能力は微量の酸素から体の中で酸素を作り出せるスキルのため、長く息を止めてられるってスキルね。今のところ10分くらいかぁ〜。これで私、気絶しなくてすむかも。

(兄貴さん、そろそろ気づいて)


 ちょっとだけ息を吸うと臭い匂い......じゃなくて兄貴が離れていく。これでまともに息が吸える。

 大自然に囲まれているのに、空気が臭いって最悪じゃないよね?

 捕まってしまった私が悪いんだけど。


 子分らしき人は私の目隠しを取ってくれた。子分は顔立ちがスッとしてて、これまた長身の八頭身。顔はちょっと残念だし、歯はすきっ歯。天は二物を与えないってこういうことなんだろうな〜。


「お前大丈夫?」


 はぁ〜なんかね。これは偏見でしかないんだけどイケメンに言われるオマエと残念な人に言われるオマエの価値が違うんだと拳を使って教えてあげたい!

(完全なる偏見です)


「もうちょっと待っててくれよな」


 そういうと木々の中に一本の道があり、その先には大きな小屋があり、小屋を見ている子分の目はどこか真剣な目そのモノだったけど、残念な人ってどうしてこんなにもサマにならないんだろうって思ってしまう。

(本当に私って最低な女。違う本能のまま生きているの)


 それより、この人から兄貴のような香ばしい匂いがしないのは何故なんだろう? むしろ良い匂い。

 と私が残念な思考をまわしていると、私の天敵である兄貴で馬車に近づいてきた。


(......この時点で倒しちゃおうかな)

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