第10話 青い鎧の正体
次の日、私はファジーと共に村長の家に向かった。村長は痩せ細っていて、なんか隣の家に住んでいた犬の顔に似ているって思っちゃって笑いを堪えるのに必死だったり。
(結構失礼な私)
「そいで、話というのは?」
「あの北の森なんですけど、少しの間近づかないで欲しいんです」
「それは何でじゃ?」
「ゴブリンを元の場所に返してあげるまで」
私の言っていることが変なのか、村長、そしてファジーは怒った顔をしている。
(そりゃあ仲間、親が殺されたらそう思うよね。私も)
そして、外で聞いている村人たちもざわつき始めているんですが、私は外様だからそう言えるのかな?
でも、討伐したところで今回は何の解決も出来ないって思ったの。
今回は論点が違う気がして。
「とういうことはあれか、ゴブリンを討伐せずに戻って来たと」
「はい! だってあんなに美味しいケーキ作れるゴブリンが悪いモンスターなわけないじゃないですか!」
(私はそう思う)
袋からゴブリンの作ったケーキを村長の前に出したが、村長はその食べ物をゴミ箱へと捨てた。
「ちょっと何してるんですか‼︎」
「毒でも入っていたらどうするんじゃ。それともお前もモンスターの仲間なのか?」
安直な発想だなと、まあ思った部分はあるけども、まずは胃袋を掴めればなと思ったんだけど......ダメか。
「なあ、琴音は俺らをおちょくっているのか?」
「なわけないじゃん。私は思ったことを思った通りにしたいだけ」
「話にならん。もう二度と顔を見せんでくれ」
何? 異世界の長(おさ)は話を聞いてくれないところのスタートなの。結構めんどくさいんですけど。
これさ、誰かが犠牲になってもらわないといけないやつ? 本気になると怖いんだよって脅さないと話を聞いてくれないやーつ?
止めようよそういうの。
「私はどちらでもいいのですが、教えてください。青い鎧の人って誰ですか?」
ん? 村長もファジーも顔色が変わったよ。血の気が引いてますけどどうしたんですか?
「その言い方はやめい。命を落とすぞ」
「でも、ゴブリンが青い鎧の人って」
「だからその言い方はすんじゃねえ!」
「なら、教えなさいよ。その人を」
「......そうか、レンダンの森から流れて来たんじゃな」
おっ話が繋がって来たじゃん。先にこのワードを出せば良かったのか。交渉ってめんどくさいんだね。
「そのお方はアルカイダス王国の王子、ゾウザン」
象さん? なんか可愛いんだけど。私はププって笑っちゃった。
「......琴音、俺は忠告したからな」
「だって可愛いんだもん」
「話を続ける。その王子は昔から領土の拡大を王国の強化ととして励んでおられるお方なんじゃ。次期王様は、ゾウザン王子になるとも言われておる」
「絶対に嫌なんだけど」
「おい、コラ」
「ということは、その象さんに話を付ければいいってことね。了解」
私の行くべきところは決まったし、それでいっか。
「話って、一般人が話を聞いてもらえるわけないじゃないだろ」
「私は普通じゃないから大丈夫だよ」
とりあえず、そこに向かうための準備が必要かな。ゴミ箱に入っているケーキはもったいないけど。
(まだ食うつもりだった。てへぺろ)
ゴブリンさんを救うためにはそれしかないもんね。
私は旅の準備をするために村長の家を出た。
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