第3話 ファスト村の少年
ドアが開くと斧を持った18歳くらいの少年が私の目の前に現れたの。
青ざめるよね。怖いよね。だってステータスがすごいっていっても今まで一般生活をしていただけだよ。
斧とか非現実的な物を持たれていたら、そりゃ〜か弱い乙女ですもの青ざめますわ。
私は自己防衛反応が働き、たくさんの涙を目に溜めた。
すると.....
【※スキル 女の武器を取得しました】
と目の前に表示された。
「冗談言ってる場合かぁぁぁぁ」
と叫びたかったけど、状況が状況のため声が出るわけもなく、
ただただ美容室の椅子に座りながら、固まっていることしか出来なかった。
「なんだ、女じゃん」
少年は構えていた斧を下に下ろし、笑顔で手を差し伸べてくれた。
「どうしたんだい? 迷い込んでしまったのかな? ごめんね驚かしてしまって」
キュン‼︎ これ良く本で見たことがある吊り橋効果なのか? ドキドキが止まらない。
身長は私よりも頭一個分高そうだし、狐目でシュッとしている。
......カッコいいやないかい!
「あっあっあっ」
あちゃ〜恐怖で言葉が上手く言えない。ちゃんとありがとうって言いたかったのに。ハァ〜
「君、その服珍しいね。王都から逃げてきたのかな? でもファスト村は王都から離れているからもう大丈夫だからね」
私の服は紺色のワンピースだからこの人たちから言えば確かに変わった服に思えるよね。
「なんだよ、ガキじゃねえかよ」
「まあ良かったじゃねえか、女の子で」
「それもそうか」
村人たちは少女ということが分かって安心したのか、次々と小屋を離れていった。
まだ上手く立てない私をゆっくり持ち上げてくれる少年は村人たちを見ながら、少し怖い顔をしてたな。
でもね、私を見る時はすっごく優しい顔に戻してくれたの。
「ごめんね、うちの村はあんまりよそ者を受け入れようとはしなくて」
困ったように笑う君、最高にキュンキュンよ‼︎ いやでも数分前まではこの人に斧を向けられてたかと思うと
複雑な気持ちになるけど。
「ここにずっといても仕方ないと思うから、うちに来ない?」
「え!!!!!!! うちにですか!」
初対面で家に連れ込むなんで、この少年は野獣なの? 獣なの⁉︎
私は声が上擦ってしまった。もう感情のコントロールが出来ないよ。
変な誤解をしたのを気づいたのか、その少年は慌てた素振りを見せて。
「違う、違う。家には誰もいないから」
......フォローになってないんですけど!
「いや、でも」
「大丈夫、とりあえず信じて」
......そうよね。まずは信じることしか出来ないよね。だって私にはこの世界が何も分からないんだもん。
私は小さく頷き、彼のお家にお邪魔することにした。
(下心がないことを願いながら)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます