第50話
喫茶店の地下室に連れられてきた。
信也は奥の棚からごそごそと何かを取りだす。
床に無色透明な丸い水晶を置いた。
「これは?」
「これに魔力を流してコントロールする訓練をしてもらうから」
まず、と言って信也は玉に向かって手を伸ばした、すると玉の中にユラユラと緑色の靄(もや)のようなものが浮かびあがってきた。
「普通の魔法なら壊れないけど、これに君の月の魔法を使って魔力を増幅させる。はい」
かずさは魔力を込めた。
緑色の揺らめきは一瞬で中いっぱいに広がって濃い緑に変わり、そして玉は砕けた。
「これを壊さないようになるまでやろうか」
砕けた玉は、ゆっくりと一所(ひとところ)に寄り集まって、バラバラだったのがまた一つの元の水晶に戻った。
「今度は自分の魔力を込めてみて、少しでいいから」
「はい」
「信也さん、私たちがやろうとしていることって間違ってないですよね」
「誰もわからないさ、そんなこと、できる範囲を精一杯やるだけだ。魔法から解放させてあげることができたらいいけど……」
「嫌ですよ、私、やりたくない」
「君には救ってあげられる力があって、目の前に苦しんでいる人がいる。そして、助けを求められたら、君はどうするんだい」
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