第41話

「いや!」

 かずさの大きな声。

「いいから行け!!」

 三日月は怒鳴り返す。

「行くよ、かずさ」

二人とは対照的にあさぎは落ち着いていた。

 二人がここにいても、何もできないことがわかっているため、三日月の言葉に従うべきだと判断したのだ。

「でも……」

 かずさは悔しそうにしながら手を握りこんだ。

「安心しろ、後からお前達に追いつくから」

 振り向きながら、二人はその場を後にする。

一人残った三日月は同胞たちを見渡す。

「俺は、罪のない人間を襲うことをお前達にやめてもらいたい……だが、お前たちが変わる氣がないと言うのなら」

その場にいた狼人間たちの爪が伸びる。

三日月の頬が青白く光る。

 獣の唸り声がその場に満ちた。



「あっ」

あさぎは転んだ。

「大丈夫!?」

「痛(い)…たっ」

 あさぎは足首を押さえる。

 かずさはしゃがんで姉の足を見ていたが、ぼそりと言った。

「ごめん、おねえちゃん」

「え?」

「一人で待ってて」

 かずさは元来た道を走りだした。

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