第40話

 つばを垂れ流し、目は血走った赤になっている。

 七匹は遠吠えを始める。

 三日月は氣圧された。後ろに声をかける。

「俺が時間を稼いでいるうちにここから逃げろ」


 

おばあちゃんが亡くなる少し前。

秋風が吹いて、少し肌寒い季節。

 おばあちゃんはまともに歩けなくなっていて、白いベッドに寝たきりになっていた。

 木の枠の窓から見える立木に枯れた茶色い葉がカラリと散る。

「あさぎ、かずさ、二人に私の魔法を継承させます」

「はい」

二人は声をそろえて返事をした。

「あさぎには夢の魔法を、かずさには氷を操る魔法と月の魔法を与えます」

「わたしは一つなの?」

「あさぎ、おまえは二つの魔法を継承すると死ぬかもしれないからね、我慢をし」

「じゃあいいや」

「かずさ、月の力を持っていることは誰にも言ってはいけないよ」

「なんで?」

「その力を利用しようとする者が必ずいるからさ、だからその力はむやみに人に見せてはいけない、できるならば使わないことが好ましいね」

「わかった」

「では、手をとって」

 二人はおばあちゃんの痩せた温かい手を握った。

「おわり」

 とおばあちゃんは言った。

「これだけ?」

 あさぎとかずさは目を見張る。

「こんなもんだよ」

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