第38話

私はすぐに捕まってしまうだろう。

 けど、諦めたくなかった。悪あがきなんだろうけど、抵抗したかった。

 狼たちの走る音が聞こえる。

 すぐ後ろにいるんだ。

 振り向くと一匹の狼が飛びかかってくる寸前だった。

 とっさに手に握った石を狼の頭に叩きつけた。

「キャン!」

 狼はもんどりをうつ。

 他の狼は警戒して止まり、こちらの様子をうかがっている。

 かずさはまた走り出した。






 ハア、ハア、ハア。

 先ほどの大樹のある地底湖まできた。

 湖を背にして立ち止まる。

 狼たちはかずさを取り囲んでいる。

グルルルルと喉の奥を鳴らして鋭い牙がむき出されている。

 後ろにさがる、かずさの足は水につかる。

 冷たいなんて思っていられなかった。

 かずさの体力はもう限界で、完全に息が上がっていた。

 もう、逃げられそうに……ないかな。

こんな時、何かの物語だったら王子様とかが助けに来てくれるんだけどな。

「大人しく、捕まれ女」

 黒い狼がしゃべりかけてきた。

手に持っていた石が手から落ちてバシャリと音を立てて水に沈む。

 予期しないことが起きた。

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