第37話

 かずさは奥歯をかみしめた。

「あなたの考え方嫌いよ!」

「どうとでも言うがいいさ」

「そんなこと、やめさせてやる」

「どうやって? 他人が他人を変えることなどできやしないよ?人は自分から変わろうとしないと変わらないんだから。まさかあんた、魔法という暴力で無理矢理いうことを聞かせるのかい?」

「あなたは悪よ!」

「あはははは、そうだね、世の中の六割は悪人だよ!」

「糞ババア!」

「お前さん、あたしに協力しないかい」

「なにを?」

「その月の力を貸してくれないかね」

「何に使おうっていうの」

「その力は狼たちと相性がいいんだよ……」

「どうせ、ろくなことには使わないんでしょ、願い下げよ」

「じゃあ、無理矢理にでも手伝ってもらうことになるよ」

 老婆の横にいた狼が前に進みでる。

 岩の影から別の狼たちがでてくる。

 かずさの前には七匹の獣が牙をむいていた。

 かずさはざりと後じさる。

 どうする?

 魔法は使えない。

 敵は狼、逃げてもすぐに追いつかれる……

 ちらと、足下にあった手のひらだいの石を見た。

 手を伸ばして取る。

「そんな石ころ一つでどうにかなると思ってるのかい」

 ダッとかずさは後ろに走り出した。

「さあ追いかけっこだ、殺しちゃだめだよ!お前たち」

 狼たちが走り出した。

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