第32話

 そう言って、天然パーマの人は舞をカウンターにうながした。

 あさぎ、かずさ、三日月は目を合わせる。

「まあ、いっか無料だし」



望月の昇る夜空に二つの影が飛んでいた。

 箒にまたがった女二人と、ショートヘアーの女の後ろにしがみついている男。

「そんなにしがみついて、怖いの?」

 かずさはニヤついて後ろに話しかける。

「こんなに高い所は初めてだからな、少しな」

「いいことしてあげなよかずさ!」

「いいこと?」

 三日月はいぶかしむ。

「よーし、それえ!」

 男の前にまたがっている女が声をあげるやグルグルと男の視界は回転し始めた。

「ぐあ! やめろ!」

 かずさは宙返りや、逆さになって滑空する。

がくっと三日月は白目をむいた。

 頭がかずさの背中に当たる。

「あ、大丈夫? ごめん、ごめん」

 普通の体勢に戻っても三日月は失神していたので休憩することにした。


 街を越えて、山を越えて。

 人の姿は見えず、車のライトもまばらになり、だんだんと姿を消して、ただ夜のしじまに月の明かりがあるだけだった。

「あそこに降りてくれ」

 白道たちの元に行くには、この魔法がかけられた森をぬけていくしかたどりつけないようになっていた。

   

ザアアと森が鳴いた。

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