第26話

 少女が生け捕りにされていた。

 檻の中に入れられて、うずくまっていた。

 三日月は檻に近づいて中にいる少女を見る。

 少女は三日月と目を合わせると、怯えたかのように目をふせ、体を震わせていた。

 三日月は仲間がしてくれるように少女の足を舐めた。

 少女はくすぐったそうにしてクスクスと笑った後、三日月の頭を撫でてくれた。

「優しいワンちゃん、ありがと」


 ねぐらの奥の白道様のいる場所へ向かった。

「白道様、三日月です」

しわがれた声が応えた。

「おはいり」

扉を開いて中に入ると、老婆が揺り椅子にもたれてゆらゆらと揺れていた。

 ボウと淡い光が一つだけある、暗い部屋。

「どうしたんだ、愛しい子」

「お願いがあって来ました、あの捕らえた女の子を逃がしてあげて欲しいのです」

 老婆は鼻にかけて笑う。

「何、寝ぼけたことを言っているんだい馬鹿を言っちゃあいけないよ、いくらお前の頼みでもそれは聞けないねえ」

 三日月は老婆を見ながら訊ねた。

「あの子はどうなるのですか」

「そりゃあ、お前たちの餌になるか、売りさばくかのどちらかだねえ」

「餌に……なる?」

 三日月は耳をうたがった。

 俺たちの餌?

 人間を?

「白道様、餌とはどういう……」

「ああ、お前には言ってなかったかね、お前たちはたまに人間の肉を食べているんだよ、あの子のにおいが美味しそうだと思わなかったかい?」

 三日月は部屋から飛び出した。

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