第23話

 睨みあった二匹はお互いに犬歯をむき出して、唸りあう。

 一方が足を踏みだして吠えた。

 それが合図かのように闘いが始まった。

 首や耳を狙って噛み合う、有利な位置を取ろうと上に乗ろうとする。

 体勢がぐるぐると入れ替わる。

 白の狼が下になり黒い狼が上から噛みつく、二匹は暴れる。

 白の狼が人間になった。

「まいった」

「はええよ」

「疲れる」

「たくよ」

 二人は訓練をやめてシャワーを浴びに行った。

 


「三日月兄ちゃんなんでいつも負けちゃうんだよ!」

「戦うの好きじゃないんだよ」

 三匹の子供が一匹に寄り集まる、小さな両の前足を上げて大きな狼の顔に飛びつく、大きな狼も片足でポンと応じる。

 大きな狼が後退すると、三匹もそれを追いかけた。

 足で転がり倒された一匹の子供はゴロリと仰向けになり、両足で目の前にある大きな顔にパンチする。

「三日月おいで」

 白道に呼ばれたので三日月は遊びをやめてそばへ行く。

「今日からお前も狩りに連れていくから、そのつもりでいるんだよ」

「わかりました」

 ついに三日月も白道の役に立てる日が来た。

 狼は尻尾を振っている。

隻腕の老婆はかさついた手で狼を撫でた。

「あたしの可愛い子」

「よし、食事にするよ!」

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