第21話

「お風呂入ってきなよ」

「ありがとう」

 と言って、三日月は浴室にむかった。




 冷えてかじかんだ手足に温かいシャワーをかけると、じわりと心地よかった。

体が温まっても、手の震えはおさまらなかった。

 鏡を見ると、狼の自分と人間の自分がいた。

(俺は、また……)

(傷つけあうのなんて嫌なのに、あいつを殺してしまうところだった。俺はあいつらにあんなことをやめさせたいだけなんだ。また仲間を殺すなんて嫌だ……)

「ああしていなければ今頃死んでいるぞ、それでもいいのか?」

(いっそ殺された方がましかもしれない、仲間を殺すよりも楽だ)

「殺されたら、あいつらを止める者は誰もいないぞ?そうなれば被害者はさらに増えるだろうな、あの子みたいな子供がまた死ぬんだ」

(……大切な仲間を傷つけるなんて、もう耐えられない!)

「お前は、それでも自分の感じたことが正しいと思って仲間を裏切ったんだろ、もうお前は仲間を殺したことがあるんだ、わかっているだろ?」

「あんなことしたくなかった!」

 

 

 浴室からでて、リビングに行くと、ガラス戸から月明かりが部屋の中にさしている。雨は上がったようだ。 

ソファに座った彼女を見ると月の光に照らされた顔がなんとも美しかった。

 かずさはこちらを見て口を開いた。

「どこ行ってたの?」

 かずさと合った視線をパッと外して下を見た。

 三日月は黙ったまま立っている。

「震えているの? まだ寒い?」

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