第20話

 間髪入れずに、倒れている狼人間に馬乗りになって喉に手をかけて圧をいれる。

「ぐが、あ……あ……」

 は!

 三日月の体から毛が無くなり、みるみると人間に戻った。

 手をパッと離す。

 相手は口からつばを垂れ流して氣絶していた。

 三日月は立ち上がりこの場から去ろうと行きかけたが、立ち止り振り返る。

 振り返った時、ポツポツと雨が降り出した。

月は雲で隠れていた。

 少しの間、氣絶している男を見ていたが、スッと闇夜にとけていった。




サー。

「雨、降ってきた」

雨の音が耳に届いて、ガラス戸を見ながらかずさはつぶやいた。




 水で濡れた雑巾が床に落ちて水の飛沫をあげたような音がベランダから聞こえた。

目を向けると、雨に濡れた狼がいた。

 かずさがガラス戸の鍵を開ける。

 ガラガラガラ。

「ちょっと、ずぶ濡れじゃない、風邪ひいちゃうよ」

「ああ、」

 三日月は雨で濡れたためか、冷えた体を震わせていた。

「待ってて、タオル持ってくるね」

 かずさは、タオルを脱衣所から持ってきて、後ろを向いていた三日月に手渡した。その間に三日月の姿は人間になっていた。

 タオルで頭を拭く三日月。

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