第18話

 かずさはベランダへ降りて、部屋の中に入った。

 空の鉢植えや、植物が生えていた鉢に氷の華がいつの間にか咲き乱れていた。




 火傷もだいぶよくなった。

 彼女たちが施してくれた薬とまじないのおかげだ。

 深更。

 この夜、三日月の耳には狼の遠吠えが聞こえていた。

行かなければならなかった。

 仲間たちの元へ。

 狼は十三夜を走った。

 風よりも速く。




 扉を開けてリビングを見ると、ベランダの戸が開いて、カーテンがはためいていた。

 月光が四角くフローリングに落ちている。

「どこいったの? それよりも……ゴキブリが入ってくるでしょ! 閉めて行ってよ!もう」 かずさは戸を閉めにいく。  



タッタッタ……

 立ち止まり、見えたのは高架下のコンクリートの壁にベットリとついた血痕。

鉄の臭い。

 切れかかった街灯の灯り。

「まだ近くにいるはず……」

「三日月、答えを聞かせてくれ」

耳慣れた声が呼びかけてきた。

 後ろを振り返ると口を血で汚した黒い狼がいた。

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