第16話

 地下の人氣の無い駐車場。

「十六夜……」

その男は振り返り口を開く。

「今ならまだ間に合う、戻ってこい!」

「そんなことできるはずがないだろ」

「お前はあの方の特別なんだ、今ならまだ……」

「もう、戻れない、戻る氣もない」

 十六夜は言葉を返してこなかった。三日月を見つめるだけだった。

「知ってたか、俺たち人間を食ってたんだぜ。人間が人間を食うなんてやっちゃいけないことだろ……」

目の前にいる男はキッと見据えてこう返した。

「俺たちはもう狼だ。次に会うまでに考えが変わっていなかったら、俺はお前を殺さなければならない、来週狩りがある、待っているからな」

 十六夜は後ろを向いて去って行った。


上弦の月がでていた。

「ちょっと、冷えるね」

 かずさは腕をさする。

 ほら、と三日月は着ていたジャケットをかずさに手渡した。

「ありがと」

 と渡されたジャケットをはおる。

「私も寒いな」

「家まで我慢しろ」

「私に優しくない!」

 かずさは楽しそうに笑っていた。

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