第12話
「あなた、もし明日死ぬとしてその前にしたいこととかある?この前死ぬ思いをしたんだから考えたりしたんじゃないの」
あさぎは手を動かしながら三日月に話しかけてきた。
「とくに、これといって……いつ死ぬかわからないからな、特別になにがしたいとかはないが、命が消える時に大切な人がそばにいてくれたらいいなとは思っている」
「確かに、人生の最後に自分の好きな人がそばにいてくれたら幸せね」
あさぎは料理の手を進める。
待っていると、
ゲロがでてきた。
いや、これは、よく見ると皿にのった……ゲロ?
「これはなんだ?」
「チャーハンよ」
「おい、なんで半笑いなんだよ」
「いや、チャーハンよ」
「自分でもこれがチャーハンじゃないと思ってるんだろ、なんだこのグチャグチャした黄色いご飯は。まるでゲロじゃないか!」
「うるさいわね、黙って食べなさい」
おはよと言ってかずさが起きてきて、黙ってテーブルに置いてあったゲロを口に運んでいた。
寝ぼけ眼に、ボサボサの髪、だぼりとしたパジャマ、透きとおるような肌、血色の良い桜色の唇にスプーンをもっていく。
「なに?」
かざさは三日月にじっと見られているのに氣づいて目をあげた。
三日月は顔を赤らめて下を向く。
「いや、そんなのがうまいのかなって思って」
「美味しいから」あさぎがキッチンから会話に割り込む。
かずさは笑顔でこう言った。
「美味しくないよ」
「嘘でも美味しいと言いなさい!!」
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