第17話 雨と、スケルトンと、おはぎ

 今日は朝から雨だ

 梅雨が明けたが、台風が近づいている。

 縁側で読書する。


 1冊読み終え、ヤーコン茶を淹れた。

 少し渋みがある独特の味が、読書で疲れた頭を癒す。


 雨の合間になったら、どこに行こうか考える。

 ユークスの顔が見たくなった。

 元気にしているか確認に行こう。

 そして、読書を再開した。


 昼過ぎになり雨が上がる。

 光が差してきた。

 台風の時の天気は変わり易い。

 手早く収穫作業を終えよう。

 キュウリを見て回る。

 あっ、取り残しだ。

 スーパーで売っているキュウリの1.5倍ほどの大きさになったのがある。

 葉で隠れているとこういう事がよく起こる。


 キュウリは採らないで放置しておくと、ヘチマの実ぐらいの大きさになる。

 とうぜん硬くて食えたもんじゃない。

 1.5倍ほどでも皮が硬いので、ピーラーで皮を剥かないと食べられない。


 キュウリの収穫を終えたので、インゲンを採る。

 インゲンも取り残しとかが良く発生する。

 だが、それほど硬くならないので、構わずに採る。

 収穫の終わり頃だと硬くなるので、この時は採らないで、豆を完熟させる。

 完熟させたら採って、しばらく干してさやから豆を取り出す。


 インゲン豆は和菓子とかに良く使われている。

 調理の仕方によっては小豆より美味いと感じる事もあるぐらいだ。


 手早くインゲンを収穫して、地蔵様にインゲンをお供えする。

 背景が墓地に変わる。

 むっ、人が。

 いや、骨だ。

 スケルトンという奴だな。

 これがアンデッドか。


 直立する骨だな。

 もっと近くで見てみたい。

 境界ぎりぎりまで近づく。


 するとスケルトンが俺から離れていった。

 むっ、俺を恐れているのか。

 家の方へ俺が移動すると、スケルトンは境界まで近づく。


 俺が境界まで行くとスケルトンは離れていく。

 俺のどこが恐ろしいというのだ。

 俺は一般人だぞ。

 それとも、アンデッドも忌避きひするような体臭でも出ているのか。

 畑仕事をすると汗臭くなる。


 ドワーフとエルフも気にしてなかった。

 それとも知っていて口に出さなかっただけか。

 考えると何か負のスパイラルに陥りそうだ。

 俺はタオルで汗を拭いた。


 スケルトンが身構える。

 んっ、何だ?


 もしかして、俺はタオルを手に取って素振りする。

 スケルトンが攻撃するような姿勢を見せた。

 タオルが怖いのか。

 あれっ、このタオルは回復のタオルだ。


 アンデッドは回復が怖いのか。

 小説では回復魔法でアンデッドを倒すのはよく知られている。

 何だ。

 体臭の問題じゃなかったのか。

 やきもきさせやがって、こんにゃろ。

 ユークスも来るかも知れないからこのアンデッドを何とか始末しよう。

 目下の武器は回復のタオル。


 俺は棒の先にタオルをつけて突き出した。

 タオルもダンジョンのアイテム扱いなんだな。

 問題なく境界から出せた。


 四苦八苦してスケルトンにタオルが当たると、スケルトンは光に包まれ消えた。


「ありがとう」


 そう声があった。

 成仏したんだな。

 今は7月なので、お盆も近い。


 おはぎが食いたくなった。

 あんこを凍らせたのが冷凍庫にある。

 このあんこは近所の人にもらったものだ。


 あんこを解凍して、米を握りあんをまぶした。

 縁側でおはぎを頂こうとすると、ユークスが大勢の人を連れて現れた。


 人々は手に棒を持っている。

 何をしに現れたのか察した。

 アンデッドを退治に現れたんだな。

 もう退治はしちまったが、次の時に来てもらえなくなると困る。

 ねぎらってやろうと思った。


 そうだ。

 俺はインゲンのあんこを解凍した。

 このインゲンはうちの畑で採れた奴だから、アイテム扱いして貰えるかも知れない。

 インゲンのおはぎを作る。


 境界によって声を掛けた。


「アンデッドなら倒した。ご足労を掛けたから、甘味を食ってもらいたい」

「みんな、おじちゃんが何かくれるって」


 俺は境界から、インゲンのおはぎをユークスに渡した。

 やっぱりアイテム扱いされたな。


 よし、おはぎを食おう。

 まずは小豆。

 口に入れて噛むとあんこの甘さと、米が混ざり合って、素朴な美味さを伝えて来る。

 収穫とアンデッド退治で疲れた体が癒された気がした。


 次はインゲンのおはぎだ。

 白いあんが小豆とはまた変わった見た目の印象を与える。

 食ってみたが、味の違いはほとんど分からない。

 味が違うのだが、言葉には出来ない。

 でも美味い。


「うめぇ! おいら、こんな美味い物は初めて食べた」


 ユークスだけでなく人々も美味いと言っている。

 お気に召したなら何より。

 おっ、また雨が降り出した。

 今年の梅雨は雨が少なかったから、台風は良い恵みの雨だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る