第18話 ウイルスと、地球滅亡と、キュウリの糠漬け

 昨日に引き続き、相変わらずの、降ったり止んだりの空模様。

 雷も鳴って、湿った土の匂い。

 昨日地面を少し掘ってみたが、雨が降ったのに3センチ下は乾いてる。

 もっと降ってほしいものだ。


 読書するのも飽きて来た。

 心霊治療だが、雨の日も休まず続けている。


 掲示板を見ると治らない人もいるみたいだな。

 その病気はウイルスとか遺伝的病とか生まれつきとか様々だ

 タオルは回復力や抵抗力を高める効果もあるらしく、ウイルス系で持ち直した人もいる。

 俺は医者じゃないので、はっきりとは分からない。


 ウイルスを殺す魔法について考えよう。

 菌はある意味弱い。

 石鹸とかアルコールでも死ぬのだからな。


 そうだ。

 生命力をちょびっと吸い取る魔法とかないだろうか。

 ありそうだな

 エイザークに相談だ。


 ジャガイモを供えて、ドワーフ城の謁見の間に繋ぐ。

 雨は相変わらずだが、傘はあるから問題ない。


 エイザークと俺は片手を挙げて挨拶する。


「生命力を吸い取る魔法ってあるか?」

「あるぞ。あるが良いのか?」

「何か不味いのか」

「アンデッドの魔石でライフドレインの効力を持たせるんだが、忌み嫌われている」

「使っている人はいるんだろう?」


「尋問官と猟師だな。どっちも嫌われ者だ」

「俺は構わん。動物を殺すような強力のじゃなくて、弱い虫を殺すぐらいの威力が良い。それと体の中に効力を持たせられるか」

「弱くするのなら簡単だ。それと、体内に影響が出ないようにする方が難しいな」


 何に付与してもらうか。

 菌が死ぬまで、時間が掛かりそうだから、患者に掛ける物がいいな。

 夏用のストールにしよう。


 ストールは大概、女物だ。

 なぜ俺の家にあるかと言えば、プレゼントとして買ったが、渡しそびれた。

 詳細は聞かないでくれ。

 思い出すのも嫌だ。


 この際だ、使ってしまおう。


「よし掛けるぞ。【付与魔法、生命力奪取】」


 出来上がったストールを羽織る。

 菌が死んでいるかは分からない。

 今度、整体屋で実験してみよう。

 たまに、家族とかが風邪を引いている場合もあるからな。


 エイザークに何か、あげよう。

 そうだ、今の時間だとぬか漬けのキュウリが食べごろだ。


 俺は漬物樽からキュウリを取り出した。

 一切れ齧ってみる。

 塩気とほのかな酸っぱさとキュウリの甘さが心地いい。

 そして、乳酸菌が分解した旨味。

 ビールが欲しくなる味だ。


 俺は境界まで、椅子とビールとぬか漬けのキュウリを、持って行った。

 雨の中の酒盛り。

 これも乙だな。


「乾杯!」

「乾杯!」


 境界越しにエイザークと漬物をつまみに酒を飲む。

 ドワーフの農業も上手くいっているようだ。

 こんなに短時間で効果が出る訳はないのにな。


 まだ、2週間だぞ。


「ソウタの持ってくる物は、色々とおかしいぞ。一度、専門家に見てもらった方が良い」

「誰もおかしいなんて言ってなかったけどな」

「魔力がな。凄い量含まれている。含まれているだけで悪さはしないのが救いだ」

「へぇ、なんでかな?」


「推測だが、ソウタの住んでいる所は、魔力に溢れているんじゃないか」


 地球が魔力一杯。

 何の冗談だ。

 分析機器で魔力が検出されたなんて事はない。


 仮にだが、地球に魔力があるとしよう。

 地球人は魔力の使い方を知らない。

 とうぜん使わない。

 使わなければ増える一方だ。

 増えすぎるとどうなる?


 風船みたいに破裂する。

 やばいな。

 滅亡するんじゃないだろうか。

 あれっ、俺の畑は異世界に穴を開けた。

 もしかして、魔力が増えすぎて破裂したのか。

 そうすると穴から魔力が絶賛、漏れ出している最中なのか。

 全ては俺の想像だ。


「どうした。顔が青いぞ」

「世界に穴が開いたらどうなると思う」

「亜空間に穴が開く事はよくある事だ。心配は要らない。そのうち、閉じてしまう」


「何らかの理由で固定されたら?」

「行き来できるだけだな」


 エイザークは心配してないな。

 平気なのか。


「魔力が流れ出したらどうなると思う」

「穴の大きさによるが、魔力を取られた方は、寒くなったりするな」


 恐ろしい事柄が浮かんだ。

 恐竜が絶滅した氷河期は異世界への穴で起こったんじゃないのか。

 あれを引き起こしたのは巨大隕石だ。

 それで世界に穴が開いたら、雷で開くよりもっと大きいはずだ。

 全て想像だが。


 専門家に話を聞きたい。

 どうやら俺の畑は地球滅亡の鍵を握っているらしい。

 もし、地球に魔力が溢れているのなら、地球の専門家はそれを使って大活躍しているはずだ。

 活躍してないって事は、地球の専門家は大した事がない。

 話を聞くのなら異世界でだな。


「どこに行けば、専門家に会える?」

「わしが招聘しょうへいしてやろう」

「そうか頼むぞ」


 これで一安心だ。

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