最強の家庭菜園ダンジョン~最強のダンジョンとは準備期間のダンジョンだ。入口がなければ攻略出来ない。俺のダンジョンは永遠に準備が終わらない。畑に終りなんてないからな~
第11話 回復の魔石と、モロコシと、モロヘイヤ丼
第11話 回復の魔石と、モロコシと、モロヘイヤ丼
遂にエイザークの下にトロールの魔石が届いた。
「お前は何ちゅう物を寄越すんだ。輸送隊として1000人ほどの集団が来たんだぞ。侵略戦争の始まりかと大慌てになった」
「えっと、意味が分からない」
「トロールの魔石1つで大豪邸が建つ。それが7つもあれば分かるだろう」
ああ、200億の現金輸送を頼んだのと同じ事か。
「すまなかったな。お詫びに、魔石1つを除いて、おすそ分けするから許してくれ」
「そんな物で許せるかと言いたいが、助かったよ。これで、国宝が作れる」
「トロールの魔石を付与するとそんなに違うのか?」
「体の中に悪いできものが、できても治る」
おい、癌が治るのかい。
でも使わないという選択肢はないんだけどな。
「じゃあ、これに付与してくれ」
俺は境界で新品のバスタオルを広げた。
「軽いな。分かってるのか」
「すぱっとやってくれ」
「【付与魔法、回復強】」
バスタオルに付与してもらった。
「このバスタオルで世界征服出来そうな気がしてきた。しないけどね」
「何、馬鹿な事を言ってるんだ」
「だって、トロールのやつら、死んだ体の物は不吉だって言って、毛嫌いしてるんだぜ。また、頼めば、貰えそうなんだよ」
「その考えは分かるな。死体からは一定確率でアンデッドが生まれるからだろう」
「ええっ、死体が動き出すのか」
「ああ、生きている者を襲う。だから墓地は街から少し離れた所に建てるのが原則だ」
ユークスには必要な時以外は墓地に来ないように言っておかないとな。
いや、護衛を雇うべきだろう。
回復のバスタオルを作ったので、出張整体屋で試運転だ。
「シゲさん、具合はどう?」
「わしゃ、悪い所などありゃせん。話し相手が欲しいだけなんじゃ」
「なんかこの間と言っている事が違うよ。整体を受けると調子が良いって。じゃ始めるよ。はい、捻って」
「くっ」
俺はバスタオルをシゲさんに掛けた。
シゲさんの顔が苦しそうな表情から、楽になった。
やっぱりどこか悪いんじゃ。
「どう?」
「楽になったわい。もろこしを食べていけ」
「せっかくだから頂くよ」
茹でたもろこしにかぶりつく。
シゲさんもニコニコしながら食べている。
「生き返った気分じゃわい。こんなにもろこしが美味いのはいつぶりじゃったか」
もろこしは甘かった。
口の周りが粘ったぐらいだ。
最近のもろこしは甘い。
俺が子供の頃はこれほど甘くなかった。
砂糖を入れたみたいに甘い。
だが、嫌な甘さではない。
自然の甘味というのだろうか。
醤油を塗って焼いたのも美味いだろうな。
獣除けがあるなら、来年からはもろこしを作ってみようか。
俺が挑戦した年は、食い頃になった途端、動物に全て齧られた。
狸かハクビシンの仕業だと思うが、正確には分からない。
夜中に寝ないで番をするわけにはいかないからだ。
ただ、夜中に鳴き声は聞いた。
野生動物だとはっきりしている。
たぶんシゲさんは病気だったと思う。
今は回復バスタオルの力で治ったと思うけど。
こういうを続けたらきっとトラブルの種が沢山できる。
バスタオルは封印するべきだろう。
でもなぁ。
助けられる人は助けてやりたい。
大学病院に寄付するとか色々と考えたが、たぶんそうなると研究にまわされるか、私物化されるな。
はっきり言って信用できない。
政府機関はもっと信用できない。
企業なんてのは
やっぱり自分が一番信用できる。
何か匿名で治療できるやり方を考えよう。
やはり、色んな野菜をお供えして、積極的に行ける場所を増やした方がいいな。
今は梅雨の終わりだが、インゲンの収穫時期は後1ヶ月ほどだ。
7月の終わりにはインゲンでスタンピードが起こせなくなる。
次に大量に取れるのは葉物野菜だな。
整体の仕事を何件かこなし、帰る。
腹が減ったな。
モロヘイヤを丼にするか。
モロヘイヤはアフリカ原産の野菜で古くから中東辺りで食べられていた。
モロヘイヤという言葉には『王様の野菜』とか『宮廷野菜』とか『王家の野菜』とかの意味があるらしい。
じっさいにエジプトではファラオが食していたらしい。
モロヘイヤを茹でて叩いて鰹節と醤油を混ぜる。
ご飯の上にそれを載せて、モロヘイヤ丼の完成。
日本のムシムシした暑さで食欲がなくても、これなら食える。
さっそく頂く。
モロヘイヤのツルツルとした食感。
オクラの様な感じだが、俺の感想ではオクラより数倍美味い。
ご飯とモロヘイヤのコクと鰹節と醤油が調和を奏でる。
これはまるで野菜の卵かけご飯だ。
安っぽい味だが、こってりしてる物より、この時期の食べ物として合っている気がする。
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