最強の家庭菜園ダンジョン~最強のダンジョンとは準備期間のダンジョンだ。入口がなければ攻略出来ない。俺のダンジョンは永遠に準備が終わらない。畑に終りなんてないからな~
第10話 トロールと、墓場と、野菜の天ぷら盛り合わせ
第10話 トロールと、墓場と、野菜の天ぷら盛り合わせ
短い時間だが、エルフの聖域には毎日接続している。
そうでないと獣除けが効力を発揮しないからな。
今日も接続した。
「トロールが来ているぞ」
「遂にか。魔石が手に入るのだな。よし、行こう。おすそ分けスタンピード」
インゲンでおすそ分けスタンピードを起こす。
インゲンは毎日50本近く採れるから、頻繁にスタンピードを起こせる。
案内された先にはトロールがいた。
トロールは何も身に着けてない。
むっ、口の中に入れてるのだったら少し嫌だな。
「キュウリの佃煮とご飯を用意したぞ。魔石はどこだ?」
「おで、食う。そしたら、魔石がある所に一緒に行く」
「そうか、ゆっくり味わえ」
「騙されているんじゃないのか」
そう、クルームが言う。
「俺を殺したって奴には得が無い。信じてみよう」
「話は終わったか? 行く。乗れ」
手を差し出されたので、手の平の上に乗った。
肩の所まで持ち上げられたので、肩に乗って首に掴まる。
「クルーム、行って来る」
「気をつけてな」
トロールは大股で歩いて行く。
物凄く揺れる。
ロボットアニメが科学的に成り立たないと言われるゆえんだ。
とてもじゃないが、振動でどうにかなりそうだ。
乗馬よりきついなと思って、尻の皮は大丈夫か心配になった時に、
「登る」
「ちょっと、たんま」
静止の声も虚しく、気づいたらもう10メートル以上登ってた。
必死に首にしがみつく。
永遠に続くかと思われた時間は唐突に終わった。
上に着いたのだ。
上は楽園とも呼べるような
そしてまたトロールが歩き、窪地に着いた。
そこはまさに墓場だった。
茶色いむき出しの地面に、白い骨が積み重なっている。
骨の大きさからトロールの物と思われた。
降ろされたので、手を合わせておく。
「ここ、不吉。おで、入れない」
トロールでも縁起を担ぐのだな。
俺は窪地に入った。
光る物が半ば土に埋もれて所々にある。
俺は手で掘り返してそれを手に取った。
これが魔石だろう。
手あたり次第掘って、ポケットに入れた。
こんな所でいいだろう。
ポケットが一杯になったので、上に上がった。
トロールは不気味な物を見るような目で窪地を見てる。
「魔石を採るのは良いのか?」
「触るの勘弁。無くなってほしい」
本当に不吉だと思っているんだな。
帰り道、心なしかトロールが俺を恐れているようだった。
エルフが待っている所に降ろされて、トロールは急ぎ足で立ち去った。
俺が穢れたみたいな扱いだな。
「どうだった」
「尻が痛い。皮が剥けそうだ」
「魔法を掛けてやろう。【植物魔法、癒】」
「回復も植物魔法なのか?」
「植物の癒しの力を借りるのだ。聖魔法ほどの威力は出ないが、気休めにはなる」
「うん、少し楽になった気がする。それで魔石なんだが、ドワーフ王国のエイザークに送ってほしい」
「我々が届けるのは御免こうむる。人間の街まで行って人間に届けさせよう」
「頼む。2つぐらいはエルフで使っても良いぞ」
「それはありがたいな。杖にはめ込もうと思う」
「回復の杖になるのか?」
「そうだ。一族の宝になるだろう」
「さあ、宴会だ。野菜の天ぷらを作るぞ。インゲン、ナス、
天ぷらを揚げて、揚げたてを食う。
サクッとした衣。
卵が入ってない代わりに、良く分からない果汁が入っている。
コクが卵よりあるような気がする。
油も良い物を使っているのか、変な脂っぽさがない。
サクッと齧ると野菜の甘味。
天つゆのしょっぱさが丁度いい。
擦り下ろされたショウガが更に天ぷらをさっぱりとさせる。
「天ぷらは美味いな。ここでは小麦粉は貴重品だが、その価値がある」
「薬草とかこの森には沢山ありそうだな」
「あるが、採り過ぎると、絶滅してしまう。エルフで使う分だけしか採らない」
「人工栽培はしないのか。土の工夫だけでも、生えるやつはあるはずだ」
「我々はドワーフではない。土を弄ったりはしない」
「じゃあ、土を森に撒くぐらいは良いだろう。土を人間に作らせるんだ。人間は金になると知れば、命さえ差し出す奴がいるからな」
「ふむ、人間にな。キノコをいくらか渡して、人間に土の研究をさせるのは良いだろう」
薬草の人工栽培が上手くいくと良いな。
エルフにとっても人間にとっても良い話になるだろう。
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