第8話 武闘大会と情報屋

武闘大会当日、会場前を集合場所として三人が集まった。

「お疲れ様です、ギルマス。」

「お疲れ様です。」

「二人ともお疲れ様、今日は無礼講でも大丈夫だからね。」

「お気遣いありがとうございます、しかし大丈夫です。」

「私もこのままが合っていますので。」

「二人がそういうなら別にいいよ。今回の大会の内容は何かな?」

そう言うと二人が大会について話し始めた。

「今回の大会は全450人が参加しています。そこから予選を経て64人に絞ります。この予選はすでに5日かけて終了しています。そこからトーナメント制で最後の一人まで戦い抜くという感じです。」

「ルールは他者の介入さえなければなんでもありです。」

「なるほどね、典型的なタイプのトーナメントだね。」

「第一試合は30分後に始まります。32試合がそれぞれ障壁に囲まれた空間で同時に行われます。」

「それで徐々に人数を減らしていくのか。シード権がないのは公平でいいな。」

「優勝報酬は報奨金の他にこの国の騎士団長と戦える権利が与えられるそうです。」

「騎士団長?まぁ、団長って言うくらいだから強いんだろ。」

「それが報奨になる意味がわかりません。どういうことかギルマスはわかりますか?」

「憶測だけど武人は強者を求めるもの、だからこそこの国の騎士団長クラスと戦えるのは名誉なことなんだろうな。」

「そういうことですか。」

「よし、このまま席に移動するとしよう。」

「「はい!」」

チケットを買い指定された席に向かうと活気に溢れた歓声が聞こえてきた。

「すごい歓声だね、それほどまでにこの大会はこの国の一大イベントなんだろう。」

「魔法で国の中ならどこでも見られるようになっているそうです。」

「なるほど、未来の戦士を育成する目的もあるのか。」

「そうだと思います。ところで、今回全ての試合を見るんですか?」

「いや、少し観光してから戻ってくる。あ、もし俺が準々決勝までに戻って来なかったら呼んでくれ。」

「了解しました。」

用件を伝えそのまま南の方に向かい、元々ミューに教えてもらった場所に向かった。その場所は路地裏にあった。

[暁の空]と書いてある看板が立っている店に入った。

「いらっしゃいませ。」

「1人です、『星を散りばめたウォッカ』をお願いします。」

そう言うと少し眉を上げた店員がカウンターに案内してくれた。少ししてグラスと共に店主が口を開いた。

「何をお求めでしょうか?」

「帝国の侵攻が王国に向くのか否かを聞きたい。」

「代金は桁外れになりますがよろしいでしょうか?」

「元々ここに来たのだからそれぐらいは覚悟の上です。」

「でしたら、金貨1500枚かそれと同等の価値のものをご用意してください。」

「これでいいですかね?」

そう言いながら俺は結晶を差し出す。

「これは中に魔法を封じられる魔封じの結晶。しかし、中に何もないのなら出せて金貨200ですな。」

「この中には伝説級魔法が込められている。」

そう言うと店の中にいた全ての人がこちらを向いた。そしてその中の1人が口を開いた。

「あ、ありえない!伝説級なんて人間の領域じゃない!嘘をつくのも大概にしろ!」

他のものもそれに同調する。それを掻き消すように俺は刀を抜く。

「もし、信じられないならこの剣を見るといい。」

「その剣がなんだってんだよ!」

「この中には実力者もいるだろう。ならば、この剣を折ってみるといい、この剣もその結晶と同じく伝説級のアイテムだからな。」

そう言うと全員が一斉に剣に向かって自分たちの武器を振い始めた、だが、誰もヒビすら入れられない。

「満足しました?」

そう言いながら哀れな客達を見ていると奥から店主がモノクルを掛けた青年を連れて出てきた。

「この結晶を鑑定すればよろしいので?」

青年が店主にそう聞いていた。

「はい、お願いします。」

青年がモノクルを結晶に近づけると

「な、そ、そんな馬鹿な!?」

「どうなさいましたか!?」

モノクルを外してこちらを向いて小さな声でこう言った。

「伝説級で間違いありません。」

それを聞いた瞬間店の中で再び騒ぎが起こった。

「まじか!?ほんとに伝説級かよ!」

「俺、金貨2000だす!」

などなど先ほどとは打って変わって全員がこの結晶を買おうとオークションのようになっていた。それを遮るように

「この結晶は情報と交換でしか渡せないので。」

そう言いながら店主の方を向いてこう言った。

「これなら文句ないですよね?」

そう聞くともちろんと言うように頷いた。

「じゃあ聞かせてください、帝国の情報を。」

「はい、それではまず、結論から言います。

帝国は、必ず侵攻してきます。」

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