第4話 交渉と賄賂
耕作の内容について村長と話していた時だった。
「村長!大変だ!」
一人の青年が建物に入ってきた。
「どうした。そんなに慌てて。」
「執政官だ!いま、門の前に兵士を連れてそこに来てる!」
「なんじゃと!?クリエ様、着いてきてくれませんか。」
村長は困り顔でこちらを見てきた。もちろんこちらの答えは決まっている。
「もちろんです。ザバラ殿、案内をお願いします。みんなは村民の保護を。」
ギルメンに村民の保護を頼み村長と一緒に自分が入ってきたのと逆の方角の門に行くと甲高い声が耳を叩いた。
「今すぐ門を開けよ!これ以上待たせるのならば国家反逆罪で問答無用で連行するぞ!」
「い、いま開けますのでお待ちください!」
村長が声をかけ門を開くと一際大きい馬に乗る大男とそのそばに控える偉そうな男がいた。その後ろには300ほどの騎馬隊がいた。
「執政官様をどこまで待たせれば気が済むのだ!」
「も、申し訳ありません!」
村長が謝ると今まで口を閉ざしていた執政官がこちらに話しかけてきた。
「この村で隣国の者達が出入りしているのを私直属の冒険者達が目撃している。そのことについて申し開きはあるか?」
「我々はただ交流を深めようと思い隣国の方達をこの村に招いた次第です。」
「この村は外からの支援がなければ存続も危ういだろう。その気持ちはわからないでもない。」
「(あれ?この執政官もしかしていい人か?)」
「とはいえだ、現在隣国と我が国は停戦中とはいえ戦争状態にある。その事実は変わらない。よって国家反逆未遂としてこの村の責任者上位3名を王都に連行しその場で裁定を下すものとする!」
「(う〜わ、やっぱりダメな人だった。約束したし助けるとしますか。)」
「あの〜、すみません。発言してもいいですかね?」
そう問うと偉そうな男が口を開いた。
「なんだ貴様!執政官様の前で無許可に発言など許されることではないぞ!」
「構わぬ。してどのような用件で発言をした。」
「この村の住民は俺たちの庇護下に入ったんだ。勝手に連れてかれちゃあ俺たちの面子に関わるからな。」
「庇護下だと!?この村は我が国の領内にある!何処の馬の骨とも知らぬ貴様らに渡せるものではないわ!」
「悪いがこの村の人達は俺たちについてきてくれるそうだ。先ほど話し合ったからな。」
「ならば貴様が責任者ということか、なら貴様を連れて行くことにしよう。それでどうかな?」
「悪いな、これからやることがまだあるんだ、連れてかれるわけにはいかん。」
「ならば強制的に連れて行くまでだ!」
「ク、クリエ様!あの執政官様はレベル28!この国でも10本の指に入るほどの実力者です!お一人では勝てる可能性はありません!」
「(28か、弱いじゃん。かといってここで一方的に殺しちゃうと流石にまずいよな?適度に受けて当て身で倒す!それなら問題ないだろう。)」
そう考えていると目の前で剣を抜いた執政官がこちらに向かってきていた。
「抵抗するのならばこの場で散れぇぇい!」
馬の上から横薙ぎの一撃が飛んでくる。俺はそれに無抵抗で受けた。やっぱり痛くないなこの攻撃、普通に俺の防御力を下回ってるし。
「そんなものですか?執政官とは。」
「な、なん、だと?」
「馬鹿な、執政官様の一撃で死なぬというのか!?」
「さぁて、次はこっちの番だ!」
拳を構え殺気を放つと執政官が焦りながらこう言った。
「ま、待ってくれ!わ、悪かったこの村には何もしないから、ゆ、許してくれぇ!」
殺気にビビったのか震えながら完全降伏の姿勢をとった。
「流石に殺されかけて何もなしに返すわけにはいかないでしょ?」
そういうと近くに寄りながら袋を取り出してこう言った。
「で、でしたら、こ、これをこのお金でどうにか、ど〜うにかお許しください!」
賄賂か、何か味気ないな。まぁこれでもいいか。
「ならば今回の件は何もなかったことにしろ。この村のことは問題なし、俺の存在も他者に言うことは許さん。それなら手を打とう。」
「わ、わかりました!全て従います。」
そう言いながら馬車で逆方向に向けて走り始めた。それを見届けて、後ろを振り向いて
「これで解決ですね。」
「ク、クリエ様。誠に、誠に今回はありがとうございます。」
「約束を果たしただけのことです。もし、可能ならばそのお返しはみなさんの働きで返してください。」
「もちろんです。我々一同粉骨砕身の覚悟で働かせていただきます。」
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