第3話 タギヌ村
「これからどうします、ギルマス?」
「とりあえずこの世界の情報を集めないとだ。それを最優先にしよう。」
「それなら街や村に行くのが早いでしょうね。」
「近くの街が村まで行ってみるよ。他のみんなはここで最大限に警戒をしておいて。」
「待ってください、ギルマス。仮面は外して行った方がよろしいかと。」
「え?あぁそうだな。外して行こう。」
仮面を外すと20代前半の整った顔が現れた。
「それじゃあ、行ってくる。」
「行ってらっしゃませ。」
そのまま窓から飛び降り走り始めた。
「遠視の魔法で見た限り一番近いのはあの村だ。〈身体強化〉。」
そのまま30分ほど走ると目の前に木組の壁が見えた。
「すみませ〜ん。どなたかいらっしゃいますか?」
大声で中に声を掛けると軋み音がして扉が開いた。
「旅のお方ですか?私はこの村の村長をしております。ザバラ・ニキと申します。ザバラとお呼びください。」
「これはご丁寧に、ザバラ殿。私の名はクリエ・オルト・リース。クリエとお呼びください。」
そう言うとザバラ殿が少し困った顔を見せてこう言った。
「クリエ様。この村にぜひ招きたいのですが現在この村は少々厄介なことになっておりまして。」
「なにがあったんですか?」
「実は最近隣国の兵が度々この村に来ておられるのです。我々としては全く問題はないと感じていました。隣国の方達とは良好な関係を築けていたんです。それがこの国の執政官に見つかったらしく反逆罪に問われようとしているんです。」
「そんなことで反逆罪?なかなか厳しいですね。」
「我々としてはなんとかしないといけないのですが我が国では法が絶対。いかなる例外も認めないのです。」
「なるほど。(流石にここで見捨てるのも少し気がひけるな。) それなら我々の庇護下に入りませんか?」
「庇護下ですか?クリエ様は一体何者で?」
「ただの人間ですよ。ちなみにこの国に未練などは?」
「ありません。圧政に高税、民のことをなにも考えない政策に辟易しているものが集まっているのがこの村なので。」
「わかりました。それならここに仲間をお呼びしても?(流石にこれを独断では決められないしな。)」
「はい?かまいませんが。」
「ガンマ、聞こえているか?」
通信魔法で呼びかけると返事が返ってきた。
[聞こえておりますよ、ギルマス。]
「俺がいるところにワープできるか?」
[問題ありません。ワープ先にギルマスを指定できます。]
「それならアルファだけ残して他全員でこちらにきてくれ。」
[かしこまりました。]
その後すぐに俺の後ろにゲートが開いた。
「な、ななな。」
ゲートを始めてみるのか村長は腰を抜かしていたが。
「ギルマス、我々全員転移完了しました。」
「ご苦労さま。こちらこの村の村長のザバラ殿だ。みんな丁寧に対応してくれ。」
「クリエ様。この方々があなたのお仲間ですか?」
「はい。それではこれからのことについてお話ししましょう。」
村の中の集会場に入れてもらい村長とその息子と話し合うことになった。
「我々があなたの庇護下に入った場合我々は何を差し出さなければならないのですか?」
村長の息子であるガザラ・ニキがこちらにそう尋ねてきた。
「まず一つは情報提供です。我々は世界の情報に疎い。この世界の基本的な情報をいただきたい。そして、二つ目は我々の軽作業を手伝っていただきたい。」
それを聞いて今度は村長が口を開いた。
「一つ目はわかりますが二つ目は何をすれば?」
「食料と武器を作っていただきたい。」
「武器であれば材料があれば可能ですが食料は正直我々は危ないラインです。量が少しきついですね。」
「我々の耕作技術を提供します。まず試しでそれをおこなっていただきその出来た量に応じてこちらに少し提供していただければ。」
「父上、これは願ってもないこと。これを機にこの国から逃れましょう!」
「そうじゃな。だが、村の住民達にも聞いてもよろしいか?」
「もちろんです。できれば満場一致の上で良好な関係が欲しいので。」
村長が建物を出て30分ほどすると小走りで戻ってきた。
「満場一致です。皆この国の対応に呆れていたようで。」
「それは良かった。これからよろしくお願いします。」
「はい、我々タギヌ村の住民は皆様の庇護下に入るとザバラ・ニキの名の下に誓いましょう。」
貴重な情報源と頼れる人員を確保できたな。
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