第4話 遥香side

「遥香…」


私の左頬に添えられた篠原君の右手。

大きくて,暖かい...。


「絶対,振り向かせてみせるから。」


言葉の意味は分からなかったけど,どうしてだろう。

心臓が大きく揺れる。


この気持ちはなあに?


そんなことを考えていると篠原君は急に慌てだした。


「ごめん!今の全部忘れて!急に変なことしてごめん!」


色々表情が変わるところ,面白いな。


「大丈夫です。さあ,行きましょう,篠原君。」


篠原君の右手を少し引っ張って走り始める。


「水瀬さん...⁉」


「これで,おあいこです。」


これで,大丈夫だね。


さっき,一瞬だけ感じた気持ち。

胸がきゅっとしまって心臓が大きく揺れた,あの感情。

何なんだろう?

私にもわかる時が来るのかな?



部室にて__


「遥香~!待ってたよ~!」


お兄ちゃん!昼休みは抱き着いてきそうな勢いってとこだったけど,今度は本当に抱き着いてきちゃった...。


「お兄ちゃん,重いよ...。」


お兄ちゃん力強いから息ができなくなりそう。


「透,離れてあげてよ。」

「雄登,今日はすごい話すね。」

「そう?いつも通りだけど。」


雄登先輩だ~。

あ,雄登先輩が小さく手を振ってくれた。

私も手を振り返す。


結鶴ユヅもきたし,全員揃ったな。今日からマネージャーをしてくれる…」


お兄ちゃんが続きをどうぞ,というような顔でこっちを見る。


「水瀬遥香です!呼び方は何でも大丈夫です。皆さんの役に立てると嬉しいです。」


「ありがとう,遥香。じゃあ,こっちも自己紹介するぞ。」


前にたくさんの人が並ぶ。


「知ってると思うけど,俺から。3年,主将の水瀬透です。」


その後も何人か3年生の自己紹介が続いた。


「3年,清滝雄登です。よろしく。」

「あ,雄登が笑った!なんで遥香には笑いかけるのに...!はっ,もしかして遥香の事...」

「黙れ」

「ハイ」


お兄ちゃんたちの会話,見ていて飽きないなぁ。


「2年,美波海です。」


なんか,この人は海みたいに穏やかそうな人だなぁ…。


「2年,難波雪翔です。」

雪翔ゆっきーは普段冷たいし,怒ると怖いから気を付けて。」

「先輩,黙ってください。」


お兄ちゃんはそのチームの長男なのか,末っ子なのか...?


その後も自己紹介が続いた。


「1年,篠原結鶴です。」

結鶴ユヅは一年生で唯一のレギュラーなんだよ~!」


そうなんだ~。皆個性的な人たちばかりだなぁ。


「皆さんのために全力を尽くします!」


ここからが私のスタート。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る