静止する時間の中で

浅貴るお

第1話

 時計が静止する。

 全ての音も止む。

 無音の世界。

 なぜ、時間が止まったのだろう?

 でも、体は動いた。

 なぜだろう?

 時計のボタンを押す。

 何も反応はない。

 喉が乾いた。

 台所に行く。

 水道の蛇口をひねり、コップに水を注ぎ入れる。

 違和感を感じた。

 なぜだろう?

 水を飲み干し、コップを置いた。

 ピンポーン。

 インターフォンが鳴った。

「宅配便でーす」

 え、宅配便?時間が止まっているのになぜ?

 ワケわからん。

 だが、待たせる訳にも行かないので、荷物を受け取りった。

 荷物を開ける。

 時計と乾電池が入っていた。

 まさか。これって!?

 時間の止まっていた時計の電池を見る。

 電池が入っていなかった。

「うそーん」

 別に時が止まった空間にいたわけではなかった。

 時計が止まったのを、ただ、時が止まった空間にいたと勘違いしただけだった。


終わり

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静止する時間の中で 浅貴るお @ruo

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