5 ハラハラ本番
きっ、今日はつ、ついに! うっ、ドキドキ……。
あ、すみません、こんにちは! 守です。今日は隆二さんと瑠璃さんがついに、Hシーンに!
僕はドアの外で隆二さんに話し掛けるというシーンなのですが、大変緊張しております。
僕はその緊張が表に出てしまったのか、またセリフを噛んでしまいました。
あうっ、だって隆二さんってば、るっ、瑠璃さんのナニを!!
つっ、掴んでっでっ!!
モニターに映っているのが見えてしまい僕は慌ててしまいました。
「こらこら、守くん、モニター意識しすぎ」
そう監督から突っ込まれて、僕は顔を真っ赤にして慌てて視線を逸らしました。
うわっ、盗み見てたのバレバレ。
僕の出番が、なんとか終わると、監督さんやスタッフさんに「もう、思う存分見ていいよ」とか言われて、また赤面してしまいました。
それでも居残っている僕……。
はい、見たいです、すいません。
2人はそのまま何シーンか撮るのですが、今はお風呂のシーンです!!
そ、そのっ、あのっ、僕と瑠璃さんのシーンと比べるとなんていうか……。 はっ、激しいです……。
あわわわわ。
うぐっ、瑠璃さんが泣いている!
こっ、このヤロ~! って気分です。
ううあ、ううっ……。
……。
……!!
あ、ちと、もう。もうだめです。激しすぎて、僕が少しキてしまいました。
僕はそのまま廊下にフラリと出ました。刺激が強すぎたようです、はぁ……見ていられない。
僕が廊下のソファで紙コップのコーヒー片手にぼんやりとしていると、スタッフの一人が出てきて「何、もう守さんリタイヤ?」と軽く笑われてしまいました。
はい、はい、リタイアですっ、仕方ないじゃないですか。
初めて見るんだから。男同士なんて。
女性とのHシーンだったら、僕もえへへとか見ちゃうのでしょうけど、男性同士って妙にグロいというか、その部分が見えちゃっているからなのかな?
あんな風に入っちゃうんだ。あんな風に手の中で弄ばれちゃうんだ。
とか改めて観客的に見るともう、くらくらします。
僕と瑠璃さんのシーンは割と手元が暗くて、部屋も暗いので映像も幻想的な感じになっていると思うんですが、それにそんなに激しくないと思う。
つまりプレイ的な要素がないんですよ、純愛だし。
でも、さっきのシーンだとなんていうか、そういうのが満載でしかもお風呂のシーンなんで明るいというか。
はっきり見えちゃっているというか。
自分がヤルのと見るのとではヤル役も違うんですね。
はぁ……。
僕、つくづくヘタレなヤル役でよかった。
隆二さんみたいに高度なもの要求されないというか、ぎこちないのがいいと監督は言いますし。
それにしても受ける役。
あんな所に入れられるなんて僕だったら絶対嫌ですね!
恥ずかしくて郷の両親や友達に顔向けできませんし、お婿にだって行けません! 相手まだいないですけど。
きっと耐えられないでしょう。
大体彼女がいたらどう顔向けすればいいんですか!相手まだいないですけど。
まぁ、男ヤッちゃった時点で僕もかなり彼女できない率アップしたと思うんですけど。
あ、なんだか暗くなってしまいました。
けれど、彼らには彼女とかいないのかな? 隆二さんには居そうだよなぁ。
それでも瑠璃さんは見た目可愛いからやっぱり絵になるとは思うし、多くのファンを えへへ ってさせちゃうんだと思います。
受ける人って本当大変なんだなぁ。
瑠璃さん本当に体張っているんだな。
隆二さんだって悪役でそんなことしているんだから大変だよなぁ~。
でも、2人ともすることが高度すぎで恥ずかしくなってしまいました。
はぁ、凄いなぁ。
なんか自分ってまだまだなんだなぁ……。
まぁ、ヘタレだからいいけど……。
現実もヘタレてるしな。
まずいなぁ。
あ、また暗くなってしまった。
僕はそんなことをヒンヤリとした廊下で考えていました。
その後僕はスタジオに戻ることなく、ムーンを連れてぼんやり家路に着きました。
家の入り口の門で左右見渡して誰もないことを確認し、ムーンを犬小屋に繋げると、僕は安心して部屋に入りました。
と思ったら、黒ずくめの男達がっ、部屋のちゃぶ台でコーヒーの缶を飲んで待っていました!
「うわぁぁぁぁ、なんですか、あなた達は?! こんなの不法侵入ですよ! いくらなんでも、やっていい事と悪い事がある!」
「やかましい、お前等みたいな借金背負ってる奴に人権なんてないんだよ、お前ボスにいくら借りてると思ってんだ?」
2人の男のうち、見慣れないがたいのいい男がさっきから黙って僕の事を見ています。
初めて見る顔でした。
もう一人のよく来る男が部屋の中を見渡します。
「しかし、本当に何もない家だな。お茶までないなんて最悪だな」
余計なお世話です。
「帰ってください」
「そうはいかないな、今日も利息分の質に入れるものを持って帰らないとないとな」
「このテレビがいいか」
うわっ、僕の唯一の娯楽が!
「勘弁してくださいっ、それだけは~。あのっ、僕、ドラマの撮影してて、で、テレビが見れないと~!」
僕は必死にがたいのいい男にすがりつきました。口から出まかせでした、うちのテレビで有料ネット放送なんて見れません。大きな男はそんな僕を見て、なぜか手を差し伸べ僕を抱きしめます。
は? 何故?
「おい、お前、そういう事しに来たんじゃないだろう」
「ちっ」
そう言うと大きな男は手を離しました。
「全く。で、ドラマ? どんなドラマだ?」
「あ、う。余計なお世話です!」
まさか言えません。AVなんて。
男達は結局掃除機を持って帰っていきました。
ああ~僕の部屋の衛生面が劣悪に!
って、でもまだハンドクリーナーがあるのでなんとかなるとは思うんですけどね~。
はぁ……。
本当にどうしたらいいのでしょう。なんだか段々事態が深刻になって来ました。
恥ずかしくて誰にも相談できないし。
僕の未来はこのまま真っ暗になってしまうのでしょうか。
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