第12話 2004年 あいのうた?


 ねえ、さくらちゃん。お願いがあるの。


 あなたにしか頼めないことなの。

 ううん、さくらちゃんにお願いしたいの。

 私のこと、ほんとうにわかってくれるの、さくらちゃんだけだよ。あなたは特別。意志が強くて、頭がよくて、すばらしい人よ。もっと自信をもって。あなたならできると思うから、だからこんなことを頼んでいるの。

 私を信じてくれるでしょう?


 前に話したことを覚えている?

 私を殺す人がいるって話。

 10年後、犯人はあなたに近づいてくる。あなたから話を聞き出そうとするって。


 ――もしも、あなたが私を信じてくれるなら。

 彼女を、これから言う場所に連れてきてほしいの。

 きっと危ないこと。気を付けて。無害に見えたとしても、外見では判断しないで。ええ、そう、きっと女だと思うの。男の可能性もなくはないけれど、きっと女。わかるの。


 ――ありがとう。やさしいね。

 でもね、それはできないの。

 私はもうだめなの。これはもう決まってしまったことだから。

 そんな顔をしないで。

 ほんとうにありがとう。

 あなたはきっと私のことが理解できる。あなただけが私のやったことを継いでくれる。

 贈り物を用意したの。持っていてくれる? 大したものじゃないけれど、私とおそろいの指輪。どこかの指にはめていて。私も最期まで身につけるから。


 こんなことをお願いしてごめんなさい。

 ありがとう、さくらちゃん。

 もう行って。

 私のことは追いかけてきたらだめ。

 信じてるからね。さくらちゃんのこと。ずっと信じているからね。

 

 ねえ、聞いてる?

 言うこと、守ってくれるよね?

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