90話 ずっと仲のいいお友達で
私はアリシアさんと一緒に秋祭りを楽しんでいる。
その途中、アリシアさんにダンスに誘われた。
「アリシアさん? ダンスは異性とするものよ? 私とアリシアさんが踊るのは、変じゃないかしら?」
「そ、そうですよね。すみません、忘れてください……」
アリシアさんは肩を落としている。
そこまでションボリされると、何だか悪いことをしている気持ちになってくる。
「……分かったわ。アリシアさんと踊らせてちょうだい」
「本当ですか!?」
「えぇ、もちろん」
「ありがとうございます!」
アリシアさんはとても喜んでいた。
私としても、アリシアさんと踊るのが嫌なわけではない。
同性でダンスを踊るなんて変だけれど、禁止されているわけでもないしね。
「イザベラ様。わたしの気持ちに応えていただけるということでしょうか?」
「ええ」
「そ、そうですか! 嬉しいです!」
アリシアさんのテンションが高くなっている。
一体どうしてそこまで喜んでいるのか分からないけど、幸せそうなのは間違いないだろう。
(ふふふ……。イザベラ様が選んだのは、あのいけ好かない王子や貴族達ではなく、このわたしです! わたしの愛がイザベラ様に届いたのです!)
アリシアさんが何かを呟く。
よく聞こえなかったけど、歓喜に打ち震えている様子だ。
「あらあら、そこまで喜んでもらえるなんて光栄だわ」
「はい! わたしもイザベラ様に相応しい女になれるよう、頑張ります!」
「うーん、そこまで気負わなくてもいいけれど。アリシアさんは十分に魅力的な女性だと思うわ」
「いいえ! わたしはもっと上を目指します! そう、イザベラ様にふさわしいレディになってみせます!」
アリシアさんはやる気満々のようだ。
まぁ、本人が望むのであれば、それで良いだろう。
「それじゃあ、私も頑張ろうかしら。アリシアさんの友達として恥ずかしくないように」
「え? とも……だち……?」
「そうよ? 同性でダンスをするなんて、飛び抜けて仲が良くないとできないもの。アリシアさんとは、ずっと仲のいいお友達でいたいわ」
「…………」
アリシアさんは黙ってしまった。
どうしたのだろうか。
「アリシアさん?」
「…………」
アリシアさんは俯いている。
何か変なことでも言ってしまっただろうか?
それとも、突然の体調不良とか?
私がさらに声を掛けようとした、その時だった。
「姉上! こちらにおられましたか! 僕を放っていくなんて、酷いじゃないですか!」
一人の少年が、私の方へ駆けてきたのだった。
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