第2話 新たな家族

 部屋を出て広い廊下に出た。窓は大きく、そこから見える庭の景色は花壇が一面に広がり、陽の光を浴びて一輪一輪の花が輝いて見えた。窓の景色に見とれていると姉さんが遠くに行ってしまい置いていかれそうになった。


 そんなことを思いながら何とか追いつき、恐らく家族がいる食卓にたどり着いた。目にしたのは、大きなテーブルに高級そうな食事ばかりで、既に何人かは座っていた。

 「連れて来ました。お父様。」

長方形のテーブルの短辺の席に、お父さん?が座っていた。表情を伺うと何やら険しい表情だった。

 「カルマ。何故、今日は遅かったのだ?」

 「あっ、えっと、その。悪い夢を見てしまって、中々目覚められなかったのです……。


 今自分に起きた状況を説明しても混乱させるだけだ。だから、今は誤魔化すしかない。

 「悪い夢か。その年にもなって寝坊とはな。まぁいい、今後は気をつけるように。」

 「はい、わかりました。今後とも気をつけます。」

その年?今の年齢も知りたいけど、流石に今は聞くべきではない。そのことは一旦置いといて、先に朝食にした。

 「では、いただきます。」

そう言って食べ始めたが、家族全員が僕の方をみた。

 「カルマ、いただきますって何?」

そう言ったのは、リミアだった。今自分が発した言葉を思い出すと、「あっ」と気づき、急いで誤魔化そうとした。

 「それは、えっと。本を読んでいたら、そのような言葉が出てきまして、使ってみたくなったのです。」


 咄嗟に誤魔化したのがこれだが、不安しかない。自分の心臓の鼓動がどんどん速くなる中、お父さんが答えた。

 「カルマ、その言葉の意味はなんだ?」

 「はい。意味としては、感謝の意味が込められています。食事をする前に私たちは、生き物の命を取っています。生き物の命があるからこそ、『生きていられることに感謝する』といった意味です。」

「なるほど、『いただきます』か。いい意味だ。なら私も使おう。」


 お父さんが使おうとすると、周りの者達も使おうとした。

一旦食事をやめ、国王様が号令をかけた。

 その後、食事はスムーズに進み食べ終えた。部屋にもどり、メイドと今日の予定を確認した。

「カルマ様、今日の予定は魔力測定を行います。そのあとは、図書館で勉強、フリータイムといった流れでございます。」

 「わかりました。えーっと…」

 「イオでございます。」

 「そうだった。ごめん、まだ少しボケているのかも。」                                                                                   


 こんな自分が嫌いだ。家族のことや担当のメイドのことまで忘れるなんて。しかしそんな僕でも優しく対応してくれた。

 「体調のほうは、大丈夫ですか?」

 「はい。どこも悪くないから心配しなくていいよ」

 「わかりました」っと言うと、着替えの用意をしくれた。


 僕は用意した服に着替え、部屋を出た。

 「カルマ様、魔力測定の準備が整いました。所定の場所まで案内します。」

 そう言われ、僕はイオの後について行った。目的地に着いたが、普通のドアが目の前にあった。中に入ると若い男性が、一人座っていた。机に水晶玉だけが置いてあり、短く済みそうだ。

 「こんにちは。カルマ君で合っているかな?」

 「はい。今日は宜しくお願い致します。」

 「では、早速測定していきましょう。」


 僕は椅子に座り、水晶玉の前に手をかざした。何も変化がないが、本当に合っているのか心配になってきた。

 「すみません、本当にこれで合っていますか?」

 「はい。問題ありませんよ。そのままの状態で。」

しばらくすると、薄い霧みたいなのが出てきて、水晶玉を覆った。そして、すぅ~っと消えていった。どうやら測定が終わったようだ。


 しかし、男性の顔を伺うとあまり良い表情はしていなかった。

 「カルマ君、測定は終わったが非常に悪い結果だった。」

 「え、どういうことですか。ちゃんと説明してください。」

自分の身分は貴族で多少の魔力量はあるはず。なのに悪い結果なんて信じられなかった。

 「どのくらいの量だったんですか?」

すると衝撃的な発言が帰ってきた。

 「カルマ君。君の魔力量は0だよ。」

は?何だよ0って。まじで意味がわからない。僕はその場で戸惑った。

 「正直、これは異例です。私も原因まではわからない。すまない。もう少し詳しく調べる必要があるが、精神的にきつかっただろう。今日はゆっくり休んでくれ。」

 そう言われ、ゆっくり歩き出し、「失礼しました。」と小さい声でお辞儀をし、部屋を出た。


 「カルマ様。先程の結果はお辛かったでしょう。わたくしは寄るところがあるので、お先にお戻りになってください。」

 「うん、そうさせて、もらうよ…」

僕は、イオと別れ部屋に戻った。今日はもう元気が出ない気がしたが、(まだ優れている部分はあるだろう)と思い、気持ちを切り替えた。


 そういえば、まだ勉強する準備が整っていないことを思い出し、机の引き出しからノートを取り出した。それと同時に、紙切れが1枚床に落ちた。拾って紙切れを見ると、持っていたノートを落としてしまった。その内容は信じられないことが書いてあった。

 それは『お前は誰だ?』と。

 

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