第265話ペロリスト

264.ペロリスト






アシェラと2人だけの夜を過ごした次の朝。

微睡の中から意識が覚醒していくと、オレに寄り添うように丸くなっているアシェラの姿が目に飛び込んできた。


昨晩は行為の後、チカラ尽きて眠ってしまい、アシェラもオレもスッポンポンの状態である。

布団の隙間からアシェラの裸が見えそうで、パオーンがパオパオーンに成りそうな中、改めて昨日の行為を思い出してみた。


昨晩のアシェラはいざ事が始まると、身を固くし緊張しているのが嫌でも分かった……直ぐに”中止”の文字が頭を過ってくる。

以前に誓った事を思いだし、鋼の意思でチカラを抜いていく……ゆっくりとアシェラから身を離そうとすると、オレの気持ちを察したのかアシェラは耳元で「アルド、愛してる。ボクは大丈夫……」と囁いてきたのだ。


これで平静でいられるほど、オレは枯れてはいない!

結果、今、思いだすとアシェラにかなりの負担を強いてしまう程のハッスル状態に突入してしまった。


初めてだと言うのにペロペロ、ペロリンとアシェラを味わい尽くし、精根尽き果てるまで追い込んでから行為に突入と言う暴挙をしでかしてしまった。

挙げ句には、ペロリンでペロペロ男爵というペロリストになってしまったのだ。


冷静に考えてみれば、魔法拳を撃ち込まれてもおかしくない程、好きにやらかした気がする……

恐る恐る眠っているアシェラの顔を覗き込むと、何時の間にか起きていたらしく、真っ赤になった顔でオレを睨んでいた。


「お、おほよう、アシェラ」

「お、おはよう……」


それだけ言うとアシェラは背中を向けてしまい、明らかに昨日の件でお怒りモードのようだ。


「アシェラ、昨日の事だけど……」


オレがそこまで言うと、アシェラは被せるように口を開いた。


「ぼ、ボクは、は、初めてで良く分からなかったんだ……あんな事するなんて思ってなくて……こ、声とかでちゃって……恥ずかしい……」


そう言って布団を頭から被ってしまった。

どうやらアシェラは怒っているわけでは無く、恥ずかしがっているだけのようだ。


であれば、オレが言うべき事は……


「アシェラ、オレはアシェラと結婚出来て、世界で1番の幸せ者だ。愛してる」


やっと布団から頭を出したアシェラは、涙目になりながら不安そうにしている。


「本当に?ボク、おかしな所、無かった?」

「凄く奇麗だった」


「こ、声とか出ちゃったし……はしたない娘とか思ってない?」

「アシェラの声を聞いてオレも興奮した!そこも含めて最高だった!」


こんな話をしていると、昨日のことを思い出し、パオーンがムクムクとパオパオーンに……


「あ、アルド、足に……固い物が……」

「昨日のアシェラを思い出したら、こんなに……」


アシェラはオレから視線を外したと思ったら、強く抱きついててくる……

これは……朝から2回戦目に突入しても良いんでしょうか?


よっしゃーーー!漲ってきたぜーーーーー!!

オレの中のスイッチが完全に入った所で、部屋の扉をノックする音が響き渡ったのだった……






「全然、起きてこないから心配しました」

「すまない、オリビア」


そう言われて時計を見ると時刻は10:00を回っている……流石にこの時間では言われてもしょうがない、と言う物だ。

オレは気恥しさを誤魔化すために、普段よりも口数は多めである。


「オリビアは朝食は済んだのか?」

「はい、実家で済ませてから飛んできました……因みに実家に帰るのは明日の朝の予定です」


オリビアはそんなセリフを流し目で吐いてくる。

待ってくれ……そんな目をされたら昨日のアシェラとの夜を思いだして、パオパオーンがパパオーンになってしまうじゃないか!


話題を変え、冷静になるとアシェラだけで無く、ライラの姿も見えないのに気が付いた。


「ライラはどうしたんだ?」

「アルドは私と2人きりでは嫌ですか?」


「そ、そんな事は無い!ただ気になっただけだ」

「今日は私の番ですから、ライラも遠慮してるのだと思います」


今日はオリビアの番らしい……もしかして、これからもずっとオレには選択権は無いのだろうか……

何とも言えない気持ちを抱えながらも、オレがそれを口に出す事は生涯無いだろう。


因みにアシェラだが、この場にはいない。

オリビアが部屋に呼びにきた時点で、「ボクは後で行く。先に行ってて」とオレは自室を追い出されてしまったのだ。


暫くするとオレの部屋のシャワーを使ったらしい、濡れた髪のアシェラがやってきた。

改めてアシェラの顔を見ると、お互いに昨日の夜を思い出し、愛おしさと若干の気恥ずかしさを感じてしまう。


「アシェラ、朝食……もう昼食か。一緒に食べよう」

「うん」


オレ達の様子をオリビアが、珍しい物を見たような顔で眺めているのが印象的だった。






オリビアが用意してくれた昼食を3人で摂るが、お世辞にも会話が弾むとは言い難い雰囲気である。

勿論、空気が悪いわけでは無いのだが、オレとアシェラがお互いを気にしてしまい、会話がどうにも続かないのだ。


「ハァ……2人共、”心ここにあらず”ですね」


オリビアの言葉に、オレ達2人は更に小さくなってしまう。

そんな空気のせいなのか、昼食を摂り終えるとアシェラが実家へ帰る、と言い出した。


もしかしてペロリンがいけなかったのか?ペロリストとは一緒に生活出来ない、と言う事なのだろうか?

オレが驚きながらも泣きそうな顔をしていると、アシェラは優し気に笑いながら口を開いた。


「今日はオリビアの番。明後日には帰ってくる、心配しないで」


どうやらペロリンでペロリストは許されたらしい。

安堵の表情を浮かべていると、アシェラとオリビアが立ち上がり部屋を後にしていく。


改めて2人の後ろ姿を見ていると、アシェラの歩き方が少しおかしい。足を引きずるような……直ぐに思い至って駆け寄ろうとするも、アシェラは恥ずかしそうに、オリビアからはやんわりと拒絶の言葉を頂いてしまった。


「アルド、大丈夫だから……」

「アルド、アシェラは私が領主館まで連れて行きます。そこから実家までは馬車で送りますので、安心してください」


自分の事ばかりでアシェラの体を思いやれなかった事に、ハンマーで頭を殴られたかのような衝撃を受けてしまった。


「すまない、アシェラ、オリビア。オレ……自分の事ばかりで……」


そんな情けない姿を見せるも、アシェラは笑ってくれた。


「アルドは優しかった、愛してる。ただ、今は恥ずかしいから、あまり見ないで欲しい……」


オレは直ぐに振り向いて、アシェラに背中を見せながら口を開く。


「ごめん、オレも愛してる。オリビア、アシェラを頼むな」

「分かりました。じゃあ、アシェラ、行きましょうか」

「うん。ありがとう、オリビア」


こうしてアシェラとオリビアが出かけて行き、オレは新居に1人取り残される事となった。


(しかし、昨日の夜は少しやり過ぎた気がする。今夜のオリビアには自制しないとな……)


新居で1人待つがオリビアがアシェラを連れて出て、軽く1時間は過ぎている。

流石に少し心配になって迎えに行こうと立ち上がった所で、やっとオリビアが帰ってきた。


「良かった。遅いから心配して探しに行こうと思ったんだ」


オリビアにそう声をかけると、普段は落ち着いた雰囲気のオリビアが挙動不審になっていた。


「だ、大丈夫です!な、な、な、何もありません!アシェラから昨夜の事なんて何も聞いてませんから!」


ああ、そうですか……オリビアさん、アシェラさんから全部聞いてしまったんですね……

この瞬間、改めてペロリンは封印する事を決めた。ペロリストは死んだのだ!


「あ、アルドの!アルドの望む事が、わ、私の望む事です!!!」


!!ペロリストは死なず!いや、何度でも蘇る!!!ペロリン教バンザーーイ!

それだけ言うとオリビアは2階の自室へと、逃げるように走っていってしまった。


やっぱり、あまり調子に乗らないように気を付けよう……性の不一致で離婚なんて事になったら笑えない。

いちいち聞くなんて事はしないつもりだが、ペロリン前やペロリスト前に確認だけはしていこうと思う。






暫くするとオリビアも自室から出て来て、一緒にお茶を飲んだり、夕食の準備をしたりと、のんびりとした1日を送っていた……そして夕食も終えた頃。


「オリビア、風呂はどうする?」

「お風呂……アルドはエッチですねぇ。今日はゆっくりと1人で入りますので先に入って下さい」


「お、おう……」


何かオリビアに余裕のような物が垣間見える。アシェラから聞いたペロリストには驚いたようだが、基本、オリビアは昔から恋愛には貪欲で、思い返せばオレはいつもやられていた気がする。

それに”今日は”と言う事は、いつか一緒に入ってくれるのだろうか……


風呂は1人で入っても至高ではあるが、嫁と入るのも乙な気がする。

その時は是非、大きな露天風呂を作って嫁ハーレムを楽しみたいものだ……げへへ


思考が逸れた。

湯舟に浸かりながら頭を振り、これからの事を考えてみる。


昨夜はアシェラにやり過ぎてしまったと思うのだが、嫁同士で差を付けて良いのだろうか?

オリビアがアシェラから何を聞いているかは分からないが、ペロリン無しだと逆にオリビアを傷つけてしまわないだろうか……


浴槽の天井を見つめ、我ながらくだらない、と思いながらも中々に難しい問題に思いを馳せるのであった。






風呂から出て昨夜と同じように自室で待っていると、昨日とは反対側に扉が開きオリビアが入ってきた。

3人の中で一番年上に見えるオリビアは、ここだけの話ではあるが一番色気を感じられる。


まぁ本心を言えば、そのオリビアですら幼く見え、好みのど真ん中はむしろネロカーチャンほどの年齢なのは絶対に言えない事なのだが。

そんな心の中に蓋をして少し緊張しているオリビアに声をかけた。


「オリビア、綺麗だ」

「ありがとう、アルド……」


そこからは昨日と同じように、緊張を解すため会話を挟み、ムードが出てきてからゆっくりとベッドへ誘っていく……



アシェラに続きオリビアも、絶対に幸せにする事を誓った春の夜であった。





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