第20話 【十七の音】
ロボ「ご主人、前方に風流な川デス」
少女「風流な?」
ロボ「せせらぎの音、涼しい中に差し込む一筋の光、揺れる木の葉……」
少女「……風流かも」
ロボ「鮎」
少女「塩で食べたいかも!!」
ロボ「蝉」
少女「……裏側が嫌いかも」
ロボ「これはこれは、一句詠めそうな場所デスね」
少女「ポンコ、俳句とかわかるの?」
ロボ「これでも、ありとあらゆる俳句がインプットされていマス」
少女「まじで!?」
ロボ「せせらぎの 音の果てなる 水澄めり」
少女「風流!!」
ロボ「名を変へて 流るる川や 下り鮎」
少女「すごいすごい!!」
ロボ「蝉の脚 わさわさ動いて きもいデス」
少女「おい急にクオリティが」
ロボ「ご主人も一句詠んでみては?」
少女「ええー」
ロボ「このような美しい場所で、俳句が浮かばないようでは日本人の心がないと思われマスよ」
少女「そうかな? 日本人だからってホイホイ俳句詠むかな?」
ロボ「エセ日本人と思われマスよ?」
少女「誰にだ!」
ロボ「ほらほら、ワタシにだけ詠ませてズルイデスよ!」
少女「あんたのはデータのアウトプットだろ!!」
ロボ「……」
少女「えー、えー、うーん」
少女「……石流る」
ロボ「おお、いい滑り出しデスね!」
少女「自分重ねた 丸い角」
ロボ「……季語がないデスね」
少女「ああー、難しいな」
ロボ「歳を重ねて丸くなった自分を、川の流れる石に重ねたという句デスね」
少女「うん、まあ、そういう感じだったんだけど」
ロボ「若さのない句デスね」
少女「うるさいな!!」
少女「日溜まりに 集まる亀と 避ける猫」
ロボ「……可愛らしいデスけど風流さはありませんね」
ロボ「また季語がないデスし」
少女「ううーん」
ロボ「猫も亀もいませんし」
少女「なんか浮かんだのよー」
ロボ「とりあえず蝉を入れておけば夏の俳句になりマスよ?」
少女「蝉嫌いなんだよねえ」
少女「じわじわと 流れる汗と 蝉の声」
ロボ「おお! いいではないデスか!」
ロボ「汗がにじむ様子と蝉の声とを両方『じわじわ』で表したのデスね!?」
少女「褒められると恥ずかしいな」
ロボ「ご主人は天才デスね!!」
少女「あんたに手放しで褒められると変な感じするのよね」
ロボ「世界一の俳人デス!!」
少女「比べる相手がいないもんなあ……」
ロボ「逆に、今しか詠めない句を詠むというのもいいかもしれないデスね」
少女「今しか?」
ロボ「世界の終わりを想起させるような」
少女「ああ……」
ロボ「どうデス?」
少女「終末を ロボと二人で 見届ける」
ロボ「……イイ」
ロボ「『二人』というのが特にイイデスね」
少女「でしょ?」
ロボ「声がする 一人じゃないと 息をつく」
少女「人がいた 形跡をただ 探してる」
ロボ「病院で たくさんの人に 会いました」
少女「やめろ! トラウマを開くな!!」
ロボ「ワタシにだけ 見えた病院の 友たちよ」
少女「やめろやめろ! 見えない! 誰も見えない!!」
少女「どこへ行く? ポンコツロボに 任せてる」
ロボ「ご主人は 方向音痴で 困りマス」
少女「あはは!」
ロボ「いくらでも詠めマスね」
少女「いいのはメモしておこう」カキカキ
ロボ「時々思い出して、懐かしみましょう」
少女「うふふ」
少女「終末に ポンコツロボと 旅をする♪」カキカキ
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