第15話 【世界の終わり】

少女「ねえ、世界には、わたしたち以外の人もいるのかな?」


ロボ「いると思われマス」


少女「でも、まだ誰にも会えてないよね?」


ロボ「ワタシのサーチ範囲に入ってもらえれば、きっと感知してみせマスのに……」


少女「病院でのバグを除けば、わたし以外の人を感知することはなかったのよね?」


ロボ「あれはバグではないと思うのデスが……」


少女「あれはバグなの! そういうことにしておくの!!」


ロボ「むむ……ワタシは正常だったのデスが……」




少女「でも、どのみちこんなに人類が減ったのなら、それはもう『人類滅亡』よね?」


ロボ「……その言葉の定義をするのは難しいデスね」


少女「ゼロでなくても、限りなくゼロに近いじゃない?」


少女「今宇宙人が襲来したら、滅亡後だと結論付けるでしょう?」


少女「まさかそこらの野生生物がこの文明を築いたとは思わないでしょう?」


ロボ「ワタシたちロボットの星だと思うかもしれませんよ」


少女「あ、そっか、動いてるロボットもいるか」




ロボ「しかしワタシたちは、基本的には人間の命令を必要としマスからね」


ロボ「エネルギーがあっても、その場でじっとしていることが多いかと思いマス」


少女「それはそれで怖いな」


ロボ「話しかけた宇宙人を主人だと認識するかもしれません」


少女「子ガモか!」


ロボ「今まで見かけた中にも、実は意識のあったロボットがいたかもしれませんね」


少女「それは……気づかなかったな」




ロボ「ワタシはご主人に起動してもらえて幸せデスよ」


少女「……そう」


ロボ「倉庫で眠り続けるだけの鉄屑になっていたかもしれないのデスから」


少女「……ほかにも何体かいたよね……」


ロボ「ええ」


少女「彼らも起こしてあげたらよかったのかな……」


ロボ「しかしワタシみたいなモノを何体もゾロゾロ連れて歩くわけにはいかないでしょう?」


少女「どんな大名行列だ」


ロボ「宇宙人が来ても蹴散らせそうデスけどね」


少女「こんな世界で宇宙戦争をする気はないよ!?」


ロボ「ま、大丈夫デス、彼らは目覚めなければ、目覚めていないことにすら気づけないのデスから」


少女「……それって悲しいね」




ロボ「あのとき、どうしてワタシを起こしてくれたのデス?」


少女「……自分一人で、心細かったから」


少女「……それに、なんだか、優しそうなフォルムだったから」


ロボ「……製作者に感謝デスね」


少女「あのときの判断、間違ってなかったなーって思うよ」


少女「あんたときどきポンコツだけど、あんたがいなかったら、わたしなんてとっくに野垂れ死んでる」


ロボ「そんなことは……」


少女「ない? ほんとに?」


ロボ「……あるかもしれないデスね」


少女「でしょ」




ロボ「しかし、ワタシたちがこうして生きている限り、『世界の終わり』は来ないのデスよ」


少女「え? どうして? すでに終わりすぎるほど終わっちゃってない?」


ロボ「ご主人の世界がまだしっかり残っているじゃないデスか」


ロボ「人は少ないかもしれないデスが、ご主人がいるじゃないデスか」


ロボ「『世界』を構成するために、それで十分デスよ」


少女「……そっか」


ロボ「デスので、できるだけ長生きしてクダサイね、ご主人」


少女「……がんばろ」




少女「でもわたしが死んじゃったら、ポンコはどうなるの?」


ロボ「そんな未来の話は、ご主人が死んでからでいいじゃないデスか」


少女「死んだら話せるか!」


ロボ「そうデスね、きっとご主人の墓前で動かなくなるまで墓守をしマス」


少女「……そっか」


ロボ「デスからご主人は、心置きなくご自分の人生を、ご自分の『世界』を全うしてクダサイ」


少女「……ありがと」


ロボ「まあ、あっさり心変わりして声をかけてくれた宇宙人にホイホイついていくかもしれませんが」


少女「子ガモか!」


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