第14話 【容量】

少女「ねえポンコ、あんたロボットの割に『忘れる』ことが多くない?」


ロボ「そうでしょうか」


少女「人間らしさを持っていると言えば聞こえはいいけど……」


ロボ「そのように作られた覚えはありませんね」


少女「でしょ?」


少女「……『作られた覚えはない』ってのもロボットらしさがないけど……」




少女「あんたのスペックってどんな感じなの?」


少女「電気で動いてるのはわかってるんだけど……」


ロボ「胸のところを開けてみてクダサイ」


少女「え、ここ開くの!?」


バコン


少女「結構雑に開いたけど!? 大丈夫!? こんなに簡単に開いて」


ロボ「彫られている文字があるはずデス」


少女「えーっと」




少女「“うすのろカーティス”」


ロボ「悪口デスね」


ロボ「ていうか落書きデスね、それ」


少女「直接言えない人がここに書いたのかな?」


ロボ「他には?」


少女「“無能なお役人”」


ロボ「またそれも落書きデスね」




少女「“くたばれ、ビッチ、ニーナ”」


少女「“この給料ではパンツさえ買えない”」


少女「“隕石がこのビルに落ちてくれるのは一体いつだ”」


少女「“上司の家に強盗が入りますように”」


少女「技術者の苦悩が現れているわね」


ロボ「ワタシの中、そんなに落書きだらけなんデスか!?」




少女「あった、記憶チップ」


少女「容量は、えっと、え、1テラバイト!?」


ロボ「1テラバイト!?」


少女「これじゃあ1年くらいしか持たないんじゃない!?」


ロボ「い、い、い、1テラバイト!?」


少女「自分のことでなんでそんなに驚いてんのよ」


少女「まあ、『テラ』なんて久しぶりに聞いたけど」


ロボ「旧時代の容量デスね」


少女「そりゃ色々忘れるわけだ」




ロボ「もっとたくさん記憶できるチップを入れたいデスね」


少女「むう、どこを探すか」


ロボ「ワタシのいた工場の倉庫に、きっとあると思いマスが……」


少女「でもそこに今から戻るのは、ちょっとなあ」


ロボ「デスよね」


少女「よし、目的を果たした後、そこに戻ろう」


少女「それを1年以内に終わらせよう」


ロボ「……なるほど」


少女「それまで、あんまり古いデータを消さないようにしてよね」


ロボ「……善処しマス」




少女「落書き、消しといてあげるね」


ゴシゴシ


ロボ「ありがとうございマス……」


少女「この技術者たちがいなかったらあんたは生まれてこなかったと思うと、ちょっと心苦しいけど」


少女「あ、せっかくだから落書き足しとこう」


キュッキュッ


ロボ「あ! なに書いてるんデスか!?」


少女「なーいしょ」


ロボ「ご主人! ひどいデスよ!」


“最高の相棒 ポンコツのポンコ”


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