第9話 【やきとり】
ロボ「ポーン」
ロボ「上空40メートル付近を鳥が飛んでいマス」
少女「珍しくもないでしょ」
ロボ「ご主人、『肉』を食べたくはないデスか」
少女「え」
ロボ「超久しぶりの動物の『肉』を食べたくはないデスか」
少女「たたた食べたい!! 食べたい!!」
ロボ「そうでしょうそうでしょう」
少女「た、食べられるの? ていうかあんなの捕まえられるの?」
ロボ「ご主人、そこにちょうどいい感じの『ワラ』がありマスね」
少女「え、ええ」
ロボ「それをワタシにかぶせてクダサイ」
少女「え、えっと」
ロボ「ほら! 鳥が逃げる前に早く!」
少女「わ、わかったわよ」
ロボ「はい、いい感じデス」
ロボ「それではご主人、少し離れて隠れていてクダサイ」
ロボ「鳥が警戒してはいけませんから」
少女「りょ、了解」コソコソ
……
ロボ「……」ジーッ
少女「……」
ロボ「……」ジーッ
少女「……」
鳥「チュンチュン」バササ
ロボ「!」
少女「!」
ロボ「……」ジーッ
鳥「……」バサバサ
少女「あれって、かかしのつもりかしら」
ロボ「……」ジーッ
少女「かかしってそもそも人を模して鳥が寄り付かなくするためのものじゃなかったかしら」
ロボ「……」ジーッ
少女「あれ、なんか本末転倒? ん?」
少女「かかしに化けたロボットに鳥が寄ってくるってどういう状況?」
ロボ「……」ジーッ
鳥「チュチュン」バサバサ
少女「の、乗った!! え、マジで!? あの鳥アホなの!?」
ロボ「バカめ!!」ジュッ
鳥「!!」コロリ
少女「びびびビーム出た!! 目からビーム出た!!」
少女「そんな必殺技持ってたの!?」
ロボ「ご主人、もう出てきてもいいデスよ」
少女「え、すごい! あんたすごい!」
ロボ「きっちり脳だけ狙いましたので、身体はきれいに残ってマスよ」
少女「なかなかにエグい狩り方!!」
ロボ「ではワタシが見本の映像を映しつつ鳥のさばき方を教えマスので、頑張ってさばいてクダサイ」
少女「う、うん」
ロボ「まず首を切って血を抜いてから、腸を抜きマス」
ロボ「鳥のおしりの毛をむしり、肛門まわりを切り取りマス」
少女「いきなりハードル高くない!?」
ロボ「強く生きるためには生き物とともに自我をも殺すのデス! さあ! 可哀想などと思っていてはいけませんよ!」
少女「ひぃぃぃ」
……
ロボ「上出来デスね」
少女「手が疲れた……」ゼエゼエ
ロボ「どうしマス? すぐ食べマスか?」
少女「もちろん!」
ロボ「調理はどのように?」
少女「塩胡椒で焼く! それ以外ない! それ以上はない!」
少女「あ、バターも使っちゃう! 贅沢に!」
ロボ「ええ、最もシンプルで最も贅沢な食べ方デスね」
少女「命に感謝して……」
少女「いただきます!」パン
ロボ「……」
少女「あふっ! うま! え、なにこれうっま!」
ロボ「……」
少女「肉うまい! 最高! あはは! うっま!」
ロボ「考えてみれば、不思議な話デスよね」
少女「え?」
ロボ「人間だけが、他の動物を食べるときに『感謝』をしマス」
少女「他の動物はしないの?」
ロボ「必要以上に殺さなかったりはしマスが、命に感謝することはありませんね」
少女「ふうん、そっか」
少女「そういえば『いただきます』に該当する英語はないって、聞いたことあるけど」
ロボ「ええ、その文化も、他国からすると少し珍しいようデス」
少女「子どもの頃からそういうのが当たり前になってるからなあ……」
少女「たぶん何食べても『いただきます』って言うよ、わたし」
ロボ「ええ、いつも言っていましたね」
ロボ「でも今日はいつもよりも、より感謝しているように見えたものデスから」
少女「あはは、まあわかりやすく『命』だったからね」
ロボ「さ、食べ終わったら内臓の処理デスよご主人!」
少女「え」
ロボ「パテにしておけば少しは日持ちしマスから」
少女「わ、わたし内臓系はちょっと苦手なんだけどなあ、なんて……」
ロボ「なにを言っているのデス! 残さず食べてこそ『命への感謝』デスよ!」
少女「ううう」
ロボ「好き嫌いもお残しもダメデスよ!」
少女「お母さんかあんたは……」
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