第8話 【CDプレイヤー】

少女「あの店はなあに?」


ロボ「あれデスか」


ロボ「あれはCDショップデスね」


少女「CD?」


ロボ「音楽を記録する媒体デス」


ロボ「今はもうほとんど見ることはありませんが、今もああいった店が残っているのデスね」




少女「わー、いろんな種類があるのね」


少女「これが全部音楽?」


ロボ「そうデスね、なかなか素晴らしい品揃えかと思いマス」


少女「あ、これなんか見たことあるかも」


ロボ「有名なロックバンドのデビューアルバムデスね」


少女「あ、こっちのも」


ロボ「世界的有名なポップアーティストのものデス」


少女「これ全部聴いていいの!?」


ロボ「時間が足りないかと」




少女「ね、音楽っていうならさ、これどうやって聴けばいいの?」


ロボ「そうデスね、こういった店なら再生する装置があると思いマスが……」


少女「どんなの? 探そう!」


ロボ「そうデスね、これくらいの小さな端末と、あとはスピーカーかイヤホンがあれば……」


少女「なるほど」


ガサガサ


ロボ「ワタシも探しましょうかね」


少女「レーダー機能は?」


ロボ「小さな機械ひとつを見つけるといった作業には不向きデス」


少女「そっか」




ロボ「ワレ発見セリ!」


少女「おお、早い! ていうかなにそのかけ声」


ロボ「こちらにCDを入れてクダサイ」


少女「どれでもいいの?」


ロボ「今一番聴きたいのをどうぞ」


少女「じゃあー、これ!」


カチャン


パタン


ロボ「で、こちらのボタンを押してクダサイ」


少女「これね」ピッ




~♪


少女「わ、大きな音」


ロボ「このスピーカーは小さいけれど、とてもいいものデス」


~♪


少女「あ……」ポロッ


ロボ「どうしました?」


少女「……わかんない」


ロボ「……」


少女「なんで泣いてるんだろ、わたし」


ロボ「……音楽には、人を感動させるなにかがあるのデスね、きっと」




少女「これを歌った人がいて、これを作った人がいるんだ」


ロボ「そうデスね」


少女「でももう、その人はきっといないんだ」


ロボ「……そうデスね」


少女「……これ、持って行きたいな」


少女「CD、いっぱい、持てるだけ」


ロボ「はい、何枚でも持って行きましょう」


ロボ「ここに埋もれさせておくのはもったいないデスからね」




少女「わたし、音楽って、ほとんど興味なかった」


少女「どこかで流れているのを、ただ漠然と耳にしていただけだった」


ロボ「……」


少女「だけど、違うんだね」


少女「人が作ったものなんだ」


少女「だから知らない歌でも、心が揺さぶられたんだね」


ロボ「そうデスね、音楽というのは大昔から人類の表現活動でしたから」


ロボ「人が人の心を動かすために作られてきたのデスから」




少女「あんたは音楽作ったりできないの?」


ロボ「ワタシが作ることのできる音楽は、誰かが作った音楽のリミックスデス」


少女「?」


ロボ「オリジナルは、作れない、ということデス」


少女「コピーってこと? アレンジ?」


ロボ「まあ、そういう感じデスね」


少女「わたしは音楽作れたりしないかな?」


ロボ「ギターを練習してみては?」


少女「あ、それいいかも」




少女「んん、んん、あーあーあーあーあー♪」


ロボ「全部外れていマス」


少女「マジで!?」


少女「ら、らーらーらーらーらー♪」


ロボ「ひどいデス」


少女「!?」


ロボ「ご主人がミュージシャンでなくて本当に良かったと思いマス」


少女「んがー!! 失礼な!!」


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